"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第12話
私のえ切った線に、夫の声が喉元で詰まった。 隣につ翔太が、気まずそうに線を泳がせ、ネクタイを直しながら呟く。
「……お義姉さん。聞いてた話と違うじゃないですか。悠真の面倒は、お義姉さんが全部見てくれるって、お義母さんからも直さんからも聞いてたんですけど」
「私は引き受けるなんて言も言っていません」
翔太を正面から見据えた。
「翔太さん。美穂ちゃんは今朝、帝王切であなたのお子さんを産んだのよ。傷が痛んでけない状態で、病院のベッドで泣いてたわ。その、父親であるあなたは、悠真くんをに丸投げして残業ですか?」
「丸投げって……俺は族を養うために働いてるんです! 今のプロジェクトをされたら、昇に響くんですよ!」
「子供を産み育てるって、そういうキャリアの調を夫婦ですることじゃないの? なんでその調を、義理の姉である私に丸投げして『男の仕事』を誇らしげに語ってるの?」
「なっ……」
翔太の顔が屈辱で歪んだ。 反論できない正論を叩きつけられ、言葉を失っている。
その、職員のい引き戸がき、主任保育士の斎藤先がてきた。 その横には、青い通園リュックを抱きしめ、うつむいた悠真がいた。
の鳴り声を聞いていたのだろう。 悠真の顔は気で、唇は血の気を失い、微かに震えていた。
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その目は、父親である翔太を見ようともしなかった。
「……悠真」
翔太がおずおずとを伸ばそうとした。 しかし、悠真はそのをすっと躱し、私のろへ隠れた。 私のコートの裾を、さな指先でぎゅっと握りしめる。
父親を拒絶し、怯えきった目でアスファルトを見つめる歳の子供。 その仕が、何よりも雄弁に、この庭の崩壊を物語っていた。
斎藤先が、厳しい表で男を瞥し、私に向かって静かにをげた。
「藤井様。……の午、しおをいただけないでしょうか。園を交えて、悠真くんの今のことについて、なお話がございます」
その声のたさに、直と翔太がハッとしたように息を呑んだ。 だが、事のさを理解している顔ではなかった。 ただ「保育園にられる」という、学のような怯えを浮かべているだけだった。
翌の午。 私は休暇を取得し、保育園の面談の子に座っていた。
テーブルを挟んで向かいっているのは、髪交じりの園と、主任の斎藤先。 苦しい沈黙の、園が枚の画用を、私のに静かに滑らせた。
「……これを見ていただけますか」
つ切りの画用。 昨、園児たちが「族の絵」を描くがあったのだという。
央には、ピンクのベッドに横たわる母親と、その胸に抱かれたさな赤ちゃんの姿が、るいクレヨンで描かれていた。
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美穂と、しくまれた妹だ。 ベッドの横には、スーツを着た父親の姿もある。
けれど。
画用の。 族の輪からきくれた隅っこに、異様なものが描かれていた。
黒いクレヨンで、が破れそうなほど力任せに塗りつぶされた、角い箱。 その箱の隙から、青ざめたさな顔がつ、こちらを覗いている。 箱の周りには、太い黒い線で、幾にも京錠のようなものが描き殴られていた。
「悠真くんが、でこの隅を塗りつぶしていたんです」
斎藤先の声が、微かに震えていた。
「担任が、これは何? と尋ねました。そうしたら、あの子はこう言ったんです。『ここは、いらない子の部。ママはしい赤ちゃんがいるから、悠真は邪魔なんだって。僕が悪い子だから、鍵をかけられて、おばちゃんのに捨てられるの』と」
喉の奥が、ぎゅっと締め付けられた。 界が滲みそうになるのを、奥歯を噛み締めて必に堪える。
「藤井様」
園が、く刻まれた眉の皺を寄せ、まっすぐに私を見つめた。
「昨夜のエントランスでの保護者様同士の論も、職員が記録しております。悠真くんの精神状態は、極めて危な段階にあります。このまま親権者様が養育を放棄し、親族での押し付けいが続くようであれば――」
園は言葉を切り、極めて事務で、それゆえにい言を告げた。
「園として、児童相談所および区の『子ども庭支援課』へ、ネグレクト――理虐待の疑いとして通告をわざるを得ません」