"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第11話
「じゃあ、定でがればいいじゃない」
『はあ!? サラリーマンがそんな簡単に定で帰れるわけないだろ! おとは違うんだよ!』
おとは違う。 また、その言葉だ。
「私の仕事は、簡単に放りせる仕事だとでも言いたいの?」
『今そんな話してないだろ! 悠真がで待ってんだぞ! だとわないのかよ! おにはのがないのか!?』
体の奥底から、ドス黒いりが喉元まで競りがってきた。 のがない。 子供をダシにして、のと尊厳を奪おうとする男が、平然とそれをにする。
「悠真くんをダシに使わないで」
私はく、氷のような声で言った。
「子供には誰かの世話が必だって、あなたたちはいつも言うわよね。義母も、妹の旦も、あなたも」
息を呑む気配が、話の向こうでした。
「でもね、直。あなたたちがを揃えて『誰かがやらなきゃいけない』って言う――」
私は受話器をく握りしめた。 指の関節がくなる。
「どうしてその『誰か』ってにする、いつも私の顔を見るの?」
沈黙が落ちた。 受話器の向こうで、夫の荒い息遣いだけが聞こえる。
「私の顔を見るな。私のを、あんたたちの都のいいゴミ箱にするな。悠真くんの父親は誰? 翔太さんでしょ。翔太さんに連絡しなさい。それが嫌なら、お義母さんに頼みなさい」
『おふくろは腰が痛いって言ってるだろ! 翔太くんも張先から戻れないって――』
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「じゃあ、あなたが会社を退して迎えにきなさい。あなたの甥っ子でしょうが」
ガチャリ、と通話を指先で切断した。
そのまま受話器をフックに戻し、壁に寄りかかって目を閉じた。 臓が激しく脈打っていた。 喉の奥がカラカラに渇き、膝が刻みに震えていた。 罪悪ではない。 歳の子を質にして、どこまでも私を搾取しようとする内の悍ましさに、吐き気が止まらなかった。
事態がさらに沼化したのをったのは、それから半のことだった。
過ぎ。 遅番の引き継ぎを終え、エプロンをしてロッカーに入った私のスマートフォンが鳴った。 画面に表示されていたのは、悠真が通う保育園の固定番号だった。
胸がざわつき、慌てて通話ボタンを押す。
「はい、藤井です」
『あ、藤井様……悠真くんの、叔母様でしょうか。主任保育士の斎藤です』
相の声は、酷く緊張し、困惑に満ちていた。
『夜分に本当に申し訳ありません。実は……今、園のエントランスで、々トラブルになっておりまして』
「トラブル……ですか? 悠真くんに何かあったんですか!?」
『悠真くんは無事です、職員で待たせています。ただ……お迎えにいらしたご主様と、悠真くんのお父様が、玄関で激しい論になっていらっしゃいまして……隣の方からも苦が入りそうな状態でして』
血の気が引いた。
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「すぐに向かいます」
コートを羽織るのもそこそこに、私は駅へった。
園に到着したのは、分だった。 宅の静けさのに、すでに鳴り声が響き渡っていた。
灯に照らされた保育園のの。 スーツ姿の男が、胸ぐらを掴みわんばかりの距で睨みっていた。 夫の直と、義妹の夫である翔太だった。
「おが迎えに来るのが筋だろうが! 俺は仕事切りげてってきたんだぞ!」 直がネクタイを歪ませ、真っ赤な顔で鳴り散らしている。
「頼んだのはそっちだろ! 義兄さんが『全部引き受けるから配するな』って叩いたから、俺は残業してたんだよ! なんで急に『今すぐけ』なんて話してくるんだ!」 翔太もまた、類鞄を面に投げ捨て、目を血らせて言い返していた。
の奥では、保育士たちが青ざめた顔でち尽くし、隣のマンションの窓から複数のが審そうに顔を覗かせている。 最悪の景だった。 世体を何よりも気にする義母が見たら卒倒するような、無様で醜悪な責任の押し付けい。
「やめなさい!」
私が割って入ると、の男が斉にこちらを振り返った。
「真紀……! お、どこってたんだよ!」 夫が待ってましたとばかりに、私を指差して鳴る。 「おがさっさと迎えに来てれば、こんなことにならなかったんだぞ! 翔太くんにまで迷惑かけて!」
「迷惑をかけているのは、あなたたちよ」