"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第9話
「あなたはただ、母親にいい顔がしたいだけ。義弟に『頼りになる義兄』だとわれたいだけ。自分の懐も痛めず、自分のも使わず、全部私に丸投げして、族ごっこでいい気になりたいだけよ!」
「なんだと!?」
夫が握りつぶしたビール缶から、泡が吹きこぼれて絨毯に落ちた。
「言わせておけば調子に乗りやがって! 俺がこのの主だぞ! 俺が引き受けるって決めたんだから、おは従えばいいんだよ!」
「従わないわ」
私はたく告げた。
「、区役所に話して、あの承諾を取りげる。悠真くんの送迎も切しない。夕飯も作らない。もしあなたがどうしても引き受けたいなら、あなたが会社に勤務を申請して、あなたが全部やりなさい」
「できるわけないだろ! 俺が会社でどんなになるか――」
「それが、あなたが私に求していることよ」
夫は息を呑み、縛りに遭ったようにち尽くした。 言い返せない苛ちで、顔の筋肉が引きつっている。
その、寝のドアが細くいた。
私たちはハッとして振り返った。
ドアの隙から、暗い廊のかりを背にして、さながっていた。 悠真だった。
目をこすりながら、には私が貸したきすぎるマグカップを握りしめている。 どうやら、喉が渇いて台所へこうとして、私たちの鳴り声を聞きつけてしまったようだった。
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「……おじちゃん、おばちゃん」
掠れた声だった。 悠真の線は、夫の元に落ちたビールの泡と、私の青ざめた顔を交互に捉えていた。
「僕のせいで……喧嘩してるの?」
部の空気が、瞬で凍りついた。
夫は気まずそうに線を逸らし、舌打ちをしてそっぽを向いた。 この男は、子供のこんな瞳にすら、向きう勇気がないのだ。
私は胸を刃物で抉られるような痛みをじながら、で悠真の元へ歩み寄り、そのにしゃがみ込んだ。
「違うよ、悠真くん。の話をしてただけ。喉乾いた? お、もうね」
悠真のを引いてリビングへ向かおうとした。 その、悠真がち止まり、私のシャツの裾をぎゅっと引っ張った。
見げられたその顔には、の顔を窺う、あまりにも痛々しい笑みが張り付いていた。
「おばちゃん、僕ね、ご飯残さないでべるよ。おもちゃも全部自分で片付ける。お呂もで入れるよ」
さな胸が、ひくひくと波打っていた。
「だから……僕、いい子にするから。らないで……」
歳の子に、ここまで気を遣わせている。 自分のが迷惑をかけているのではないかと、怯えさせている。
誰がこの子をここまで追い詰めた? 誰がこのさなを壊そうとしている?
私は悠真を抱きしめながら、背につ夫を振り返った。 夫は居悪そうに、スマートフォンの画面に目を落としていた。
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反省のかけらもない、ただ「面倒なことになった」としかっていない横顔だった。
りは、完全にえ切った。 そして、私のので、ある酷な決が固まった。
先だけの善で、のを使い潰そうとするには、度そのみを骨の髄までわせるしかない。
翌朝。 計の針がを指した瞬、私は静かにベッドから起きがった。
キッチンへき、自分の分だけのコーヒーを淹れる。 悠真の朝には、昨夜買っておいたアンパンマンのスティックパンとバナナ、牛乳をテーブルに並べた。 ラップをかけ、メモを枚添える。
『悠真くんへ。朝ごはんはこれべてね。おばちゃんはお仕事にってきます』
そして、もう枚。 夫のスマートフォンのに、きく太いペンでいたメモを貼り付けた。
『本、私は番です。に勤し、退勤は過ぎになります。悠真くんの保育園の登園は分。お迎えは厳守です。送迎、筒の準備、連絡帳の記入、すべて「引き受ける」と豪語したあなたが責任を持って完遂してください。私は切ししません』
自分のバッグを肩にかけ、パンプスを履く。 玄関のドアをける直、もう度だけリビングを振り返った。
恐竜の布団ので、悠真がさな寝息をてている。
ごめんね、悠真くん。
今は、あなたにとってもしなになるかもしれない。 でも、が自分のついた嘘の責任を自分で取らない限り、あなたの本当の居所は戻ってこないの。