"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第2話
「……は?」
喉の奥から、乾いた音がた。
「ばあばがね、ママはお腹切って変だし、赤ちゃんのお世話でがいっぱいだから、悠真は邪魔になるって言ったの。だから、これからはおばちゃんのの子になるんだって」
麦茶のボトルを握る悠真の指先が、ガタガタと震えていた。
「おばちゃん、赤ちゃんいないでしょ? だから、僕がおばちゃんの子になれば、みんな助かるんだって……僕、いい子にしてたら、ママに会えるの? それとも、もう会えないの?」
のドアがき、勤め帰りの乗客たちが吐きされていく。 周囲のざわめきが、急速にのいていった。 の奥で、キーンとたい属音が響き渡る。
の指先から、血の気が引いていくのが分かった。
――おばちゃんには赤ちゃんがいないから。
その言葉が、鋭利な刃物のように胸のど真んを刺し貫いた。
結婚して。 代の半ば、度の流産を経験した。 度目の術のあと、病の井を見つめながらどれほど涙を流したか。 妊治療の末に子供を諦め、できていくと決めるまで、どれだけの夜を夫と泣きかしたか。
それを。 でもない義母が。 歳の子供のさなに、そんな残酷な嘘を刷り込んだというのか。
「悠真くん」
私は震える腕を伸ばし、その細い肩を抱きしめた。 抱きしめられた悠真の体は、氷のようにたくこわばっていた。
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「そんなこと、絶対にないから。お母さんが悠真くんを捨てるわけない。おばちゃんが、ちゃんとお母さんのところに帰すからね。絶対に」
抱きしめながら、りで界が真っ赤に染まっていった。
の夜、夫の直が言っていた言葉が、呪いのように脳裏に蘇る。
『美穂の産のことだけどさ、真紀は何も配しなくていいから。全部こっちで段取りつけてあるからさ』
得げにビール缶を傾けていた、夫のあの緩んだ横顔。 段取り。 あいつらの言う「段取り」の正体は、これだったのか。
最寄り駅に着き、スーパーでうどんの具材を買い込み、悠真のを引いてマンションに戻った。 悠真は相変わらずリュックをそうとしなかったが、リビングのソファに座らせ、テレビでアニメをつけると、張り詰めていた糸が切れたようにさなあくびをした。
「悠真くん、洗っておいで。温かいうどん、すぐできるからね」
洗面所へ向かうさな背を見送ってから、私はスマートフォンを握りしめ、ベランダへた。 たい夜が、照った頬を叩く。
迷わず夫の番号をタップした。 コール音が回鳴って、ガチャリと繋がる。 背から居酒のようなガヤガヤとした喧騒が聞こえてきた。
「もしもし、真紀? どうした? 今、翔太くん(義妹の夫)と病院のくで待しててさ――」
「直」
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く、押し殺した声をした。 話の向こうの夫が、わずかにたじろぐ気配がした。
「……なに? 嫌悪そうな声して。美穂、まだ産まれてないぞ」
「悠真くんを迎えにってきたわよ。今、うちのリビングにいる」
「ああ、悪かったな、急に。おふくろから聞いたよ。助かったわ」
悪びれる様子もない、いつもの調子。 私は呼吸をし、震えそうになる唇を指で押さえた。
「悠真くんがので、何て言ったとう?」
「は? 何って……お腹空いたとか?」
「『ママはしい赤ちゃんを育てるので杯だから、僕はおばちゃんの子になるの?』って泣かれたのよ」
沈黙が落ちた。 居酒のグラスのぶつかりう音だけが、虚しく響いている。
「……直。あなたたち、悠真くんに何を吹き込んだの?」
「あー……」
夫が気まずそうにを鳴らす音が聞こえた。
「おふくろも余計なこと言ったな。子供に変な気を遣わせるなって言ったのに」
「余計なこと? それだけ? お義母さんは、悠真くんをうちに引き取らせるつもりで話をしてるのよ! これのどこが『数のお預かり』なのよ!」
ベランダのすりを、爪がくなるほどく握りしめた。
「ちょっと声落とせよ。周りに聞こえるだろ」
夫は面倒くさそうに息を吐きした。
「引き取るなんてげさな話じゃないって。ただ、美穂のところが落ち着くまで、うちで面倒を見ようっていう話になっただけだ」
「落ち着くまでって、具体にいつ!?」
「……半とか、くてとかさ」
目のが真っ暗になった。