"「子どもがいないから」と義妹の長男を譲ろうとする義家族" 第1話
「美穂がもう陣痛に入るのよ! あんた、甥っ子の迎えすらけないって言うの!?」
ドラッグストアのバックヤード。 の特売初、うずく積まれた段ボールの隙で、スマートフォンのスピーカーから義母の切り声が鼓膜を刺した。
をししても、周囲のパート職員がわず作業のを止めるほどの音量だった。 私は元の検品端末を握りしめたまま、さく息を吸い込んだ。
「お義母さん、申し訳ありません。いま私、舗の責任者でシフトに入っていて……抜けられるとしても、くてもを過ぎてしまいます」
「!? 保育園が何に閉まるかってて言ってるの!?」
吐き捨てるような声だった。
「園児を最まで残したら、あの子がでしょう! 美穂の旦は仕事で抜けられないって言ってるのよ。し抜けて迎えにって、に連れて帰るくらい、パートでもない正社員のあんたなら融通が利くはずでしょ!」
融通が利くはずがない。 販売主任として、特売のレジ応援と薬剤師のを埋める現を回している。 だが、義母ののには「会社勤めの嫁」への敬など微もなかった。
「……わかりました。に掛けって、退の続きを取ります」
「最初からそう言いなさいよ。悠真が待ってるんだから急いで」
ガチャリ、と方に切れた。
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ツーツーという無質な切断音を聞きながら、私は奥歯を噛み締めた。 胃の底に、鉛のようなたいものが沈んでいく。
にをげ、急遽シフトを交代してもらい、エプロンを脱ぎ捨ててロッカーからバッグを引っ張りした。 駅までのを、パンプスでアスファルトを叩きながらる。 喉の奥がカラカラに乾いていた。
認保育園のをくぐったのは、延保育が始まる直の分だった。
園庭にはもう誰もおらず、夕暮れの暗いテラスのベンチに、ぽつんとさながあった。 歳の甥、悠真だった。
のウインドブレーカーのファスナーを首元までぴっちりとげ、青い関の通園リュックを膝ので抱え込むようにして座っている。 いつもなら私の姿を見つけると「まきちゃん!」と駆け寄ってくるはずの男の子が、じっとコンクリートの面を見つめたままかない。
「悠真くん、お待たせ。遅くなってごめんね」
息を切らしながらしゃがみ込み、目線をわせると、悠真はびくりと肩をねさせた。 ゆっくりがった顔は、驚くほど青ざめていた。 乾いた唇をさく噛み、泣くのを必で堪えているような顔だった。
「……おばちゃん」
「うん。お母さんね、今から赤ちゃんを産むために病院に入ったの。だから今はおばちゃんと緒に帰ろうね」
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袋を脱いでそのさなを撫でようとしたが、悠真はわずかにを引いた。 その仕に、胸の奥がきゅっと痛んだ。
園のをて、駅へと向かうすがらも、悠真は私のを握ろうとしなかった。 自分のリュックの肩紐を、両でくなるほどく握りしめている。 歳の子供が背負うには、あまりにも苦しい沈黙だった。
駅のホームのベンチに座らせ、自販売で温かい麦茶のペットボトルを買った。 キャップをけて渡すと、さな両で包み込むように受け取ったものの、をつけようとはしない。 ボトルの表面についた滴が、悠真のデニムの膝にぽたぽたと落ちていく。
「悠真くん、お腹空いた? おに着いたら、温かいうどん作ろうか」
努めてるい声を作って問いかけた。 すると悠真は、線を膝のに落としたまま、か細い声でぽつりと呟いた。
「おばちゃん」
「ん?」
「僕、今から……おばちゃんので暮らすの?」
が入線してくる轟音にかき消されそうな、震える声だった。 私は瞬、何を言われたのか理解できなかった。
「え? 暮らすって……違うよ。美穂ちゃんが入院してる、数泊まるだけだよ。赤ちゃんが無事にまれたら、すぐにお母さんのおに帰れるからね」
笑ってさせようとした。 けれど悠真は、首を横に振った。 く、何度も。
「違うよ」
「悠真くん?」
「ばあばが言ってたもん」
悠真のきな瞳から、ぽろりと粒の涙がこぼれ落ちた。
「ママ、しい赤ちゃんがまれたら、もう僕のこと育てられないって」