"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第13話
息子には、最終確認の映像は見せられていないはずだ。
スクリーンにが灯る。
音楽が流れし、映しされたのは――息子が切り刻んで捨てろうとした、かつての記憶だった。
古びた都営宅のの、さな公園。 だらけの靴を履いた幼い拓也が、ブランコので無邪気に笑っている。 その隣には、代の私がいた。 ノーメイクで、髪を無造作に束ね、物のエプロンをつけた、臭い私の姿。
会のあちこちから、「へえ、のさい頃、いな」と声が漏れる。
次に映しされたのは、学の運会。 息子がハサミで切り落とした、あの写真の全貌だった。 ゴールテープを切る息子の横で、のついた青いスニーカーを履き、たい麦茶のボトルを必で差ししている私の全が、鮮にスクリーンいっぱいに広がった。
写真の横に、美優さんが添えたテロップが流れる。
『女つで、朝から夜まで病院の清掃員として働き、僕を育てげてくれた母の。 そのの温もりがあったから、僕は今、ここにっています』
息子の喉が、ひくりと痙攣した。 砂席で、あの子はグラスを倒しそうになりながら、スクリーンを凝していた。
消したかったはずの過。 隠したかったはずの、清掃員の母の姿。 それが、何百もの列席者ので、画面で堂々と映しされている。
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商社の同僚たちがざわめいた。 「んち、母子庭だったのか」 「すげえな……母親で、あいつを私までして、うちの会社に入れたのかよ」
蔑みの声ではなかった。 そこに漂っていたのは、純粋な驚きと、敬だった。
商社でき残るたちは、甘やかされたボンボンばかりではない。 過酷な競争を勝ち抜いてきた連だからこそ、底辺からいがることの凄絶さを、誰よりも理解できるのだ。
息子はその空気の劇な変化に、完全に呑まれていた。 自分が恐れていた「世の嘲笑」など、どこにもしなかった。 嘲笑していたのは、の目を恐れて自らを偽り続けた、あの子自の卑なだけだったのだ。
そして、披宴は最の、最のを迎えた。
「婦より、ご両親へ宛てた謝のの朗読です」
ピアノの静かな旋律が流れ、美優さんがマイクのにった。 便箋をくは微かに震えていたが、その声は凛として会の隅々まで届いた。
美優さんはまず、女つで美容を守りながら自分を育ててくれた雅子さんへの謝を述べた。 会が温かい涙に包まれる。
だが、美優さんのは、そこで終わらなかった。
「そして……今、このをお借りして、どうしてもお礼を伝えたい方がいらっしゃいます」
美優さんが顔をげ、親族席の私を真っ直ぐに見つめた。
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スポットライトが、私のへと移する。
息子の息が止まる音が、会に響くかとうほどの静寂が訪れた。
「拓也さんのお母様、恵子さんへ」
美優さんの瞳から、筋の涙がこぼれ落ちた。
「私は先、お母様が働いていらっしゃる病院を訪ねました。 そこでお母様が、染症の危険と隣りわせの現で、誰よりもく、誰よりも黙々と、汚れたを磨きげ、命の現を守り続けていらっしゃる姿を拝見しました」
会が、を打ったように静まり返る。 砂の息子は、蒼な顔のまま、崩れ落ちそうになっていた。
「お医者様や護師さんが、お母様にからの謝を伝えていました。 誰かが嫌がる仕事を、誇りを持ってやり抜く。 その尊いで稼いだおで、拓也さんは学を卒業し、今、私の隣にいます。 私は、額に汗してを支えるお母様のを、から尊敬しています。 林に、このような派なお母様をお迎えできることを、私は誇りにいます」
美優さんがくをげた瞬。
会の角――息子の会社の専務と部が、真っ先にちがった。 そして、割れんばかりの拍を送った。
それに続くように、同僚たち、友たち、林の親族たちが、全員ちがった。 スタンディングオベーションだった。 シャンデリアの眩しいので、数百の拍が、波のように私にり注ぐ。
私は、膝ので両をく握りしめた。 爪がのひらにい込む。 の夜勤のたさ。