"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第11話
「じゃあ、今すぐ破談よ」 雅子さんが髪入れずに言い放った。
「式のキャンセル料、違約、今までに林が支払った結納の準備費用、すべてわせて百万。今週曜の正午までに、全額括で林の座に振り込みなさい。払えないなら、即座にあなたの会社へ内容証を送り、与の差し押さえ続きに入ります」
「よ、百万……!?」 息子の膝がガクガクと崩れ、そのにへたり込んだ。
元にある百万の借に加えて、さらに百万。 の商社にいようと、代の若造に払える額ではない。 会社に借の差し押さえ通が届いた点で、あの子のキャリアは完全に終わる。
「どっちを選ぶの? 見栄を捨てて母親に謝を捧げるか、すべてを失って自己破産するか」
雅子さんの酷なまでの宣告に、息子は震えるでを抱え、獣のように呻いた。
「母さん……!」 息子が、をうようにして私の元にすがりついてきた。
「母さん、頼むよ! 助けてくれよ! 林さんたちに言ってくれ! 母さんが全部悪かったって言ってくれよ! 母さんが認症の初期症状で、勝な妄をして、俺を陥れようとしたって……そう言えば丸く収まるんだよ!」
……は?
を疑った。 この子は、今、何と言った?
「母さんが認症で、がおかしくなって類を偽造したって言えば、警察も会社も誤魔化せるんだ! 頼むよ母さん! 俺のがかかってるんだ! 母さんはもう過ぎて、あとは病院の掃除してもらうだけだろ!? でも俺はこれからなんだよ! 息子の将来を潰す気かよ!」
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ズボンを掴む息子の指先に、力がこもる。 必で、醜悪で、れな目。 、私が命を削って守ってきた息子の、これが本当の正体だった。
私の庇護が、この子をここまで腐らせたのだ。
私は、息子のを、本ずつ、たく引き剥がした。
「……触らないで」
「母さん!?」
「お断りします」
私の声は、自分でも驚くほど静かで、どこまでも澄み渡っていた。
「私は認症でもないし、狂ってもいない。恵子という、の清掃員よ。あんたの嘘のをかぶる筋いは、これっぽっちもありません」
「な……っ、見捨てるのか!? 母親だろ!?」
「母親だからよ」 私は息子を見ろした。
「あんたが自分で蒔いた種よ。自分で刈り取りなさい。私はもう、あんたの代わりになって恥をかくことも、あんたの借を肩代わりするために夜勤に入ることも、輪際切しない」
息子の顔が、絶望とりで歪んだ。
「てきなさい」
「ふざけんな……ふざけんなよ!!」 息子はちがり、狂ったように部のものを当たり次第に薙ぎ払った。
ちゃぶ台ののコップがに落ちて々に割れた。 そして――あの子の腕が、テレビの横に置かれていた、き夫の写真てを払いのけた。
ガシャリ、とガラスが砕け散る鈍い音が響いた。
「拓也!」 美優さんの鳴が響く。
に落ちた写真ので、夫が穏やかな笑顔のまま、無残にひび割れていた。
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息子は肩で息をしながら、壊れた写真てを見ろし、それから私を憎悪に満ちた目で睨みつけた。
「あんたなんか……母親でも何でもない! クソババア!」
吐き捨てるように叫ぶと、息子は玄関をびし、階段をドタドタと駆けりていった。
静まり返った部に、割れたガラスの破片が散らばっていた。
美優さんが震えるで破片を拾おうとするのを、私は優しく制した。 「美優さん、危ないから触らないで。……掃除は、私の仕事だから」
私はほうきと取りを取りし、慣れたつきでガラスの破片を集めた。 夫の写真を取りし、指で埃を払う。
「さん」 雅子さんが、私の隣に静かにった。
「あの子は、式に来るでしょうか」
「来ますよ」 私は、夫の写真を胸に抱きながら答えた。
「あの子は、すべてを失う恐怖に耐えられない子ですから。……林様、美優さん。ご迷惑をおかけして、本当に申し訳ありませんでした。当、私も伺います」
「さん……」
「逃げません。あの子が始めた嘘の結末を、母親として、最までこの目で見届けます」
雅子さんはく頷き、美優さんのを引いて、静かに部をてった。
そして、結婚式夜。 計の針は、夜を回っていた。
部のは静まり返り、私は箪笥のにっていた。