"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第7話
その、次亜塩素酸ナトリウムの希釈液で、周囲メートルのを寸分の狂いもなく消毒していく。
誰かが汚した所を、誰もが全に通れる所に戻す。 嫌がられる仕事。汚い仕事。 けれど、この病院の全を守っているのは、医師や護師だけではない。 私たち清掃員が、染の防波堤になっているのだ。
作業を終え、モップを絞り、腰をげただった。
「さん、いつも本当にありがとうね。あなたがいてくれるから、して救急を受け入れられるわ」 すれ違った救急科のベテラン医師が、マスク越しに目を細めてをげてくれた。
「とんでもないです。お疲れ様です」
礼して顔をげた、待の太い柱のに、見覚えのあるがっているのが目に入った。
トレンチコートを着た、林美優さんだった。
彼女は、両でバッグを抱きしめるようにして、私の作業をずっと見ていたようだった。 その瞳はきく見かれ、微かに潤んでいる。
私は瞬戸惑ったが、すぐにゴム袋をし、洗いへ向かった。 入にを洗い、アルコール消毒をしてから、彼女の元へ歩み寄った。
「美優さん……どうしてここに?」
「お義母さん……」
美優さんの声が震えていた。
「病院の方に、お義母さんのお名をして伺ったら……あちらの護師さんが、『さんなら今、来の消毒に入ってくれていますよ。
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本当に仕事がくて、頼りになる方なんです』って、笑顔で教えてくださって……」
美優さんは、私の荒れた指先と、まだし消毒液の匂いが残る作業着をじっと見つめた。
「凄かったです……。あんなにテキパキと、嫌な顔つせず……病院のが、お義母さんに謝していて……」
「美優さん、ここは患者さんもいから。しのベンチでお話ししましょうか」
病院裏のさな公園のベンチに、で腰をろした。 自販で買った温かいほうじ茶を渡すと、美優さんは両でそれを包み込み、く息を吐いた。
「お義母さん。昨、拓也さんと話しましたか?」
「ええ。酷い言いいになったわ。あの子、あなたにも何か言った?」
美優さんは、辛そうに線を伏せた。 そして、コートのポケットからスマートフォンを取りした。
「これ……昨夜、拓也さんから私の母に送られてきたメッセージです」
差しされた画面を見て、私はが目を疑った。
文のメッセージが、画面を埋め尽くしていた。
『お母様、昨は母が式に押しかけ、変なご無礼を働いたようで申し訳ありませんでした。 以もお話しした通り、母は目黒の級マンションにで暮らしており、父の遺産で裕福な活を送っています。 しかしその反で、精神に酷く定になり、の成功や幸せを妬むようになってしまいました。
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今回の結婚に関しても、母は私に『切れとして百万円包め、さもなければ式をめちゃくちゃにしてやる』と脅迫してきています。 美優や林の皆様にこれ以の危害が及ばないよう、私が盾となって母を式から完全にざけますので、どうかごください』
……は?
文字が、のでを結ばない。 目黒の級マンション? 父の遺産? 切れ百万円……?
「何……これ」
私のから、乾いた掠れ声が漏れた。
「私、目黒になんてんでないわよ。昨夜あの子が鳴り込んできたのは、賃万千円の、古びた都営宅よ。夫の遺産なんて、葬儀代でほとんど消えたわ。切れ百万円……? 私が、息子にを求した……?」
美優さんは、耐えきれないように両で顔を覆った。
「やっぱり……嘘だったんですね。母もおかしいと言っていたんです。『あんなに背筋の伸びた、礼儀正しい方が、そんな浅ましい脅迫をするはずがない』って……」
美優さんの肩が刻みに震えている。
「拓也さん、私と付きい始めたから、ずっと見栄を張っていました。実は産をいくつか持っていて、母親は悠々自適に暮らしているって。私はそんなこと、どうでもよかったんです。私の父だって、定退職するはさな町の現で油まみれになって働いていたでした。母のサロンだって、積みの頃は毎何ものシャンプーで荒れして、血を流しながら守ってきたです」