"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第6話
息子は喉を引き裂くように叫んだ。
「母さんには分からないだろ! 学の、母さんが学の臨清掃に来たのこと、覚えてるか!? 黄いゴム袋して、塩素の匂いプンプンさせて、男子トイレの便器をデッキブラシで擦ってたろ!」
胸の奥を、細い針で気に突き刺されたような痛みがった。
。 拓也が学の、清掃会社の欠員がて、息子の通う学の清掃に臨のヘルプで入ったことがあった。 しでもが良く、しでも息子の塾代のしになればと、引き受けた仕事だった。
「次の、クラスの奴らに何て言われたとう!? 『おの母ちゃん、便所掃除のババアじゃん』『拓也んちって呂入ってねえの? 消毒液くせえ』って……笑われたんだよ!」
「拓也……」
「俺は必だったんだよ! のない母子庭だからって見されたくなくて、ぬ気で勉して、誰もがってるの商社に入ったんだ! 同期はみんな、親が医者だの経営者だの、いいとこの坊っちゃんばかりだ! そんなで、俺がどんな顔して『母親は病院の掃除のパートです』って言えるんだよ!」
息子の目から、粒の涙がボロボロとこぼれ落ちていた。 顔を真っ赤にし、拳を握りしめ、自分を憐れむように震えている。
「俺はただ……度でいいから、普通の、ちゃんとした庭の息子として胸を張りたかっただけなんだよ! なんでそれを邪魔するんだよ! 母さんはいつもそうだ! 『あんたのため』って顔して、結局俺に恥をかかせるんだ!」
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歳になった息子が、歳の頃の傷を盾にして、母親を殴りつけている。
昔の私なら。 「ごめんね、拓也。そんな辛いいをさせていたなんてらなかった。お母さんが悪かったわね」と、泣いてあの子を抱きしめ、自分のをさく折りたたんでいただろう。 あの子が惨めないをしないようにと、夜勤をさらに増やし、言われるがままに姿を隠していただろう。
けれど、今の私には、その姿がただただ浅ましく見えた。
私はちがった。 元に広がる茶の染みを見ろし、それから息子の目を真っ直ぐに見据えた。
「それで?」
息子の叫びが、ピタリと止まった。
「……え?」
「学のにからかわれて辛かった。商社の同期ので惨めだった。……それで? だから歳にもなって、嘘百を並べて、母親を精神病に仕てげて、結婚式から叩きすのがあんたの『のやり方』なの?」
私の声には、涙のかけらも混じっていなかった。 驚くほどたく、い響きだった。
「母さん……?」
「その便所掃除で稼いだで、あんたは私の学へったのよ。毎糊のきいたシャツを着て、綺麗な靴を履いて、就職活をしたのよ。誰のおかげでその所にてているとっているの」
「な……っ」
「胸を張れないのは、私の仕事のせいじゃないわ。あんた自のが、貧しくて卑しいからよ」
息子は、まるで平打ちでもらったかのようにずさりした。
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こんなに母親からたく突き放されたことなど、まれて初めてだったのだろう。 をパクパクとかし、絶句している。
「てきなさい」
「母さん、待てよ……」
「てって。今夜はあんたの顔を見たくない」
私は玄関を指差した。 息子は悔しそうに唇を噛み、捨て台のように「勝にしろよ! もう式には絶対呼んでやらないからな!」と叫ぶと、乱暴に音をてて夜のへと消えていった。
静まり返った部で、私は雑巾を取りし、畳の茶の染みを丁寧に拭き取った。 何度も、何度も、力を込めて。 の甲に浮きた血管と、千円の剥げかけたネイル。
泣かなかった。 ただ、胸の奥で、息子に対する最の甘えと執着が、完全にえて固まっていくのをじていた。
翌の午、病院の清掃業務は段と過酷だった。
季節れの染症が流り始め、来フロアはごった返していた。 児科ので、さな子どもが激しく嘔吐したという連絡を受け、私は防護具をにつけて現へ急した。
「さん、すみません! 処置の、かなり広がっちゃってて!」 護師が血相を変えてってくる。
「丈夫です、づかないでください。次染を防ぎますから」
私は静に処理パウダーを撒き、際よく汚物を凝固させ、密閉袋へと回収した。