"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第5話
赤ペンで無残に引かれた線。 【郎母 恵子】の文字のに殴りきされた、 『パニック障害のため欠席。席・料理』という息子の文字。
美優さんの顔から、サーッと血の気が引いていくのが分かった。
「それ……拓也さんが……?」
「ええ。息子の字よ。見違えようがないわ」
「そんな……拓也さん、お母様は昔から混みにくと過呼吸を起こして倒れてしまうから、刺激を与えないよう式は静かに見守ってもらうのが番の親孝なんだって……何度もそう言って……!」
美優さんの声が擦る。 隣で聞いていた雅子さんが、すっとにた。 品のある、けれど商売特の鋭い目が、私の顔をじっと射抜く。
「さん、とお呼びしてよろしいかしら」
「はい。拓也の母の、恵子です。林様、ご挨拶が遅れて申し訳ありません」
私はくをげた。 、病院のクレーム対応や理尽な叱責にも耐えてきたのげ方だ。 卑屈ではない。けれど礼儀を尽くした角度。
「し、ち話もなんですし……あちらの席で、お話しさせていただけないかしら」 雅子さんの落ち着いた声に、プランナーの男性が慌てて別の個を用しようといた。
だが、私は静かに首を横に振った。
「お気遣い、ありがとうございます。でも、今は失礼いたします」
「お義母さん!」 引き止める美優さんを、私は穏やかな差しで制した。
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「美優さん、私のことで混乱させてしまって本当にごめんなさいね。でも、これは林の皆様を巻き込むに、私と拓也が、の親子としてケジメをつけなければいけない問題です」
私は席次表を丁寧に折りたたみ、バッグにしまった。
「息子と、今夜きちんと話します。嘘をついたまま、あなたをしい族として迎えるわけにはいきませんから」
もう度、雅子さんと美優さんにく礼した。 雅子さんの目が、わずかに見かれ、そして何かを測るように細められたのを横目で見ながら、私はサロンのいガラス扉を押しけた。
にた瞬、たいビルが吹き抜けた。 膝がガクガクと震えていた。 指先は氷のようにたい。
けれど、のには、昨夜のような惨めな涙は滴も湧いてこなかった。 あるのは、え切ったいりだけだった。
そのの夜。 都営宅の古びた玄関ドアが、から蹴破らんばかりの勢いでいた。
ガタガタと属の擦れるな音と共に、息子が鳴り込んできた。
「母さん! 何やってんだよ!」
靴も脱ぎ散らかし、ネクタイを乱暴に緩めながら、あの子は畳に踏み込んできた。 目は血り、肩を荒くさせている。 式のプランナーか、あるいは美優さんから連絡が入ったのだろう。
「なんで式にったんだ! 余計なことすんなって言っただろ! 美優のお母さんまでいたんだぞ! 俺のがどうなるか、しは考えられないのか!」
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狭い部に、息子の切り声が響き渡る。 ちゃぶ台のの蛍灯が、微かに揺れた。
私は、座布団に座ったまま、静かに息子を見げた。
「私のは?」
「……は?」
「私のは、どこにったの?」
私はバッグから、折りたたんだ席次表のコピーと、昼サロンで抜き取ってきたムービーの構成案を、ちゃぶ台のに叩きつけた。
バサリ、とい音が落ちる。
「パニック障害? 勢の所にくと倒れる? ……拓也。私はいつ、そんな病気になったの」
息子はのに線を落とし、息を呑んだ。 瞬だけ、怯えたようなが瞳をかすめる。 だが、次の瞬には、それを隠すように表を凶悪に歪めた。
「……見たのかよ」
「見たわよ。それだけじゃない。このいちムービーの写真。学の運会、私がっていた半分、綺麗にハサミで切り落としてあったわね」
息子の喉が、ひくりといた。
「私のエプロンと、のついた靴の先だけが残ってた。……そこまでして、私を消したかったの? あんたをで育ててきた母親のは、そんなに汚らわしいものだったの?」
私の静かな問いかけに、息子の何かが限界を超えたようだった。 あの子は両でを抱え、獣のような声をげてちゃぶ台を蹴ばした。
グラリと揺れて、湯呑みが倒れ、たい茶が畳に染みていく。
「そうだよ!! 恥ずかしかったんだよ!!」