"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第4話
その写真の端、本来なら私がっていた所が、ハサミのようなもので真っ直ぐに切り落とされていた。 残された拓也の体操着の袖のすぐ横に、私の青いエプロンの端と、のついたスニーカーの先だけが、無残に切れ端として写り込んでいた。
切り取ったのだ。 私という母親の痕跡を、枚枚、丹に、自らので切り刻んで消しったのだ。
「……っ」
声にならない嗚咽が、喉元までせりがってきた。 目のが真っ暗になる。 膝が激しく震え、爪がのひらにい込んで痛かった。
私は、息子のの背景ですらなかった。 切り落とされるべき、ただのゴミクズだったのだ。
震える指で、さらにページをめくった。 挟み込まれていたのは、披宴会の円卓が描かれた、最終正の『席次表』だった。
郎婦の砂席から、番い所。 親族席。 林側のテーブルには、「父」「母」「伯父」「従兄弟」と、然と名が並んでいる。
そして、側のテーブル。
番端の席に、太い赤のボールペンで、線が無残に引かれていた。
【郎母 恵子】
そのに、殴りきされた文字。 見慣れた、あの子の尖った跡だった。
『母:体調良(精神なパニック障害の既往あり)のため欠席。席の配置・料理・引き物は切。当、席を詰めて目たないように調のこと』
パニック障害? 体調良?
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そんな病気、私はので度も罹ったことはない。 邪すら滅に引かず、病院のをいつくばって拭き続けてきた頑丈な体だ。
息子は、私を病気ということに仕てげ、ごと抹殺しようとしていた。 清掃員の母親を、この華やかな空から、をして集めた友や司の界から、完全に消しるために。
ペンのインクが滲んで見える。 涙ではない。 あまりの激と屈辱で、目蓋の裏がく焼けていただけだ。
許さない。 絶対に、許さない。
私のを、汗とにまみれた私のを、この切れ枚の嘘で塗りつぶされてたまるものか。
そのだった。
カランカラン、とエントランスのドアベルが涼やかな音をてた。
「美優、ドレスの最終フィッティング、今でちゃんと決めておかないとにわないわよ」
「わかってるってお母さん。でも、拓也さんの席次表の件、どうしても気になるの……」
聞き覚えのある声。 背筋が、氷を浴びせられたように凍りついた。
パーテーションの隙から、の女性の姿が見えた。 は、そうにスマホを握りしめている林美優さん。 そしてもう――品なツイードのスーツにを包んだ、美優さんの母親の雅子さんだった。
「様、変お待たせいたしました――」 奥の扉から、類を持った男性プランナーが戻ってきた。
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その声に反応して、エントランスにいたが、斉にこちらを振り返る。
私のには、赤線で殴りきされた席次表。 作業着のから羽織っただけの、物のトレンチコート。 そして、千円のネイルが塗られた、節くれだった私の指先。
美優さんの目が、信じられないものを見るように、きく見かれた。
「……お義母、さん……?」
静まり返ったサロンので、私たちの線が、真っ向から衝突した。
息が止まる音が、静まり返ったサロンに響いた。
美優さんの隣につ母親の雅子さんが、眉をわずかにひそめて私を見つめている。 仕ての良いツイードのスーツ。入れのき届いた髪。 その洗練された佇まいをに、作業着のに羽織った私のくたびれたトレンチコートが、あまりにも惨めに浮いていた。
のの席次表を、握りつぶしそうになる。
「……お義母さん、どうしてここに」 美優さんが、震える声で歩踏みしてきた。
私は逃げなかった。 喉の奥の渇きを無理やり唾液で湿らせ、背筋を伸ばした。 ここで狼狽えて目を逸らせば、息子のついた「惨めな母」という嘘を、自ら認めることになる。
「美優さん。突然押しかけてしまってごめんなさい」
努めて穏やかに、けれど言ずつはっきりと発音した。
「プランナーさんに、どうしても確認したい類があって伺ったの。
そうしたら……ちょうど、この席次表を見せていただいたところよ」
私の線が、元のに落ちる。 美優さんの線も、そこに吸い寄せられた。