"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第3話
「……え?」
「式にきたくないなんて、言も言ってない。体調が悪いなんて嘘よ。私は、最初から席するつもりで、留袖も用して待っていたの」
話の向こうで、美優さんがく息を呑む音が聞こえた。
「じゃあ……拓也さんは、どうして……」
「美優さん。その話、詳しく聞かせてもらえるかしら。式は、青の配会社よね?」
「はい。青の、ゲストハウスのサロンです。実は私、今から最終の引き物と席次表の確認で、そちらに向かうところで……」
「分かったわ。私もく。午の番なら、仕事を抜けできるから」
「えっ、でも、拓也さんは……」
「あの子には、言わなくていいわ。私が、自分の目で確かめたいの」
話を切った、私はしばらくロッカールームのベンチからちがれなかった。 のひらに、じっとりとたい汗が滲んでいる。
あの子は、どこまで私を惨めにさせれば気が済むのだろう。 、をすすり、汚にまみれて育ててきた母親に、ここまでの仕打ちをするのか。
私はロッカーをけ、エプロンを脱ぎ捨てた。 鏡に映る自分を見る。 髪をえ、リップを引き直し、病院の事務に「急用でだけ抜けさせてほしい」とをげた。
表参駅から歩いて分ほどのに、その結婚式の配サロンはあった。
ガラス張りのエントランス、を基調とした洗練されたインテリア、漂ってくるアロマの甘いり。
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病院の消毒液の匂いに慣れきった私の腔には、息苦しいほどの異世界だった。
「いらっしゃいませ。ご予約のお客様でしょうか?」 フロントの若い女性スタッフが、丁寧な笑みで歩み寄ってくる。
私の着古したトレンチコートと、履き慣れたペタンコの黒いパンプスを瞬だけからへらせたその線に、わずかな戸惑いが混じっていたのを、私は見逃さなかった。
「拓也の母です」 私は名乗った。
「息子の式の担当の方に、しお渡ししたい類がありまして。席次表の確認も兼ねて伺いました」
「あ……様のお母様でいらっしゃいますか」 スタッフの表が、らかに揺を帯びた。
「々お待ちください。担当の者が別の打ちわせに入っておりまして、ブースへご案内いたします」
通されたのは、パーテーションで区切られた奥の相談スペースだった。 テーブルのには、華やかなウェディングドレスのカタログや、引き物の見本が並んでいる。
「担当者が戻るまで、こちらでお待ちいただけますか。お茶をお持ちしますね」 スタッフが礼してちった。
テーブルの隅に、透なクリアファイルが無造作に置かれていた。 背表のテプラには、はっきりと印字されている。
【・林様 挙式・披宴最終台帳】
胸の奥が、激しく警鐘を鳴らし始めた。
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見てはいけない。 のプライベートな類だ。 理性はそう叫んでいた。
けれど、私の指先は、吸い寄せられるようにそのファイルへと伸びていた。
震えるで、最初のページをめくる。 タイムスケジュール、装のプラン、料理のコース。 そして――「郎婦プロフィール映像・素材確認」とかれたシートが目に入った。
そこには、披宴の歓談に流される、いちムービーの構成案がびっしりと印刷されていた。
郎側のパート。 学代のサークル活、商社での研修景、同期とのみ会、旅の笑顔。 ページを遡る。
代のテニス部の写真。 学代の修学旅の写真。 学代の、で賞状を持っている写真。
……ない。 枚も、ないのだ。
私が写っている写真が、ただの枚もしなかった。
私の記憶が、急速に蘇ってくる。 幼稚園の入園式、ブカブカの制を着たあの子のを引いて、桜のので撮った写真。 学の運会、私が朝に起きて作った唐揚げの箱を、で広げて笑っていた写真。 学の入学式、武館ので、し照れくさそうに並んで撮った写真。
あの子がをる、アルバムから何枚か持ってったはずの写真が、綺麗さっぱり消え失せていた。
それだけではない。 シートの余に、クリップで留められたさな写真のコピーがあった。
学の運会、ゴールテープを切った瞬の拓也の写真だ。