みかん小説
本棚

"清掃員の母を消した息子の結婚式" 第2話

髪をきっちりろで束ね、名札をつける。 「清掃スタッフ 」。

ゴム袋をはめ、モップと消毒液のカートを押して、病棟のい廊へる。 朝の病棟は静まり返っている。 昨夜のたい空気と、薬品の匂い。 これが、私ののすべてだ。

「さん、おはようございます。今もいですね」 通りかかった護師さんが、穏やかな笑顔で声をかけてくれた。

「おはようございます。階の処置、先にモップ掛け入りますね」

「助かります。昨夜、救急がて込んじゃってし汚れてるかも。無理しないでくださいね」

「丈夫ですよ、任せてください」

をげて、いつも通りの笑顔を返す。 仕事には、私の居所がある。 私を必としてくれるたちがいる。 それなのに、息子の「恥を晒すな」という言葉が、呪いのようにの奥にこびりついてれなかった。

午半。分の休憩で詰め所に戻り、スマホの画面を見ただった。

着信が件。 登録のない、見らぬ携帯番号からだった。 留守番話にメッセージが残されている。

再ボタンを押した。

『あ、あの、拓也さんの……お母様でしょうか。突然のお話、失礼いたします。林美優です』

息が止まりそうになった。 美優さん。 息子の婚約者だ。 これまでに度、息子のセッティングで事をしたことがある。 控えめで、礼儀正しく、学の先をしているという、とてもじの良いお嬢さんだった。

広告

なぜ、彼女が直接私に?

指先を震わせながら、折り返しの発信ボタンを押した。 コール音が回鳴ったところで、すぐに相がた。

「はい、林です」

「あ、美優さん……? 拓也の母です。先ほどはお話にられず、すみませんでした」

「お義母さん! よかった……繋がって」 話の向こうから、あからさまに堵したような、けれどどこかい詰めたような息遣いが聞こえた。

「あの、お仕事でしたよね? 本当にすみません。でも、どうしても、今にお義母さんに直接お伺いしたくて……」

「ええ、丈夫よ。今はちょうど休憩に入ったところだから。何か、あったのかしら? 結婚式のことで……」

美優さんは瞬、言葉を詰まらせた。 受話器の向こうで、類が擦れるカサカサという音がさく響く。

そして、信じられない言葉が、彼女のから零れ落ちた。

「あの……お義母さん。本当に、私たちの結婚式、席されないおつもりなんですか?」

……は?

私は受話器を握りしめたまま、凍りついた。

「え……? 今、なんて?」

「拓也さんから聞いたんです。お義母さんは、にるのが本当に苦で、勢のが集まる所にくと体調を崩してしまうからって……。だから、式当の『両親への』も、記品の贈呈も、母への負担がきすぎるから絶対にやめてくれって、拓也さんがプランナーさんに頼んでいて……」

臓が、ドクンと嫌なね方をした。

広告

「それに……席次表の確認のも、拓也さんが『母は体調の都で、最初から来られない能性が極めてい。無理をさせたくないから、席は最初から用しなくていい』って……」

のが、真っになった。

血の気がサッと引いて、元がぐらりと揺れる。 壁にをついて、かろうじて体を支えた。

私が、式にたくない? 勢の所が苦で、体調を崩すから席もいらない?

冗談じゃない。 私は、度だってそんなことを言った覚えはない。 それどころか、あの子のれ姿を見るために、何ヶもから体調をえて、千円のネイルサロンにき、箪笥の着物を入れして、待ちにしていたのだ。

昨夜、息子が言った「仕事のことを言うな」という言葉の、本当のが、瞬で繋がった。

あの子は、私に「職業を隠せ」と言ったのではない。 最初から、私というそのものを、結婚式から排除しようとしていたのだ。

清掃員の母親がそのに座っていることすら、耐えられなかったのだ。

「お義母さん……? 聞こえていますか?」 美優さんのそうな声が、受話器から漏れる。

私は、奥歯をく噛み締めた。 鳴り散らしたい衝を、必で胃の底へ押し戻す。 ここで取り乱して美優さんを混乱させては、のすることではない。

「美優さん」 自分でも驚くほど、く、静かな声がた。

「私、度もそんなこと言ってないわよ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: