みかん小説
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"少女を救った川の底に、私の元妻がいる" 第5話

置いていったもの

美穂と別れてからも、曜には戻り淵へった。

岸にの板をて、〈危険 い淵があります 遊泳禁止〉といた。増するたびに流され、同じ所にて直した。今の板で3枚目になる。

田辺のおばさんには、何か女性を紹介された。度も会わなかった。理由を聞かれても、仕事が忙しいとしか答えなかった。

事故の翌から、毎7に、差の名がない封筒が届くようになった。岐阜の消印があり、には私宛ての10万円の普通為替が入っていた。郵便局で送り主を尋ねたこともあったが、教えてはもらえなかった。

現に換え、別の座に入れておいた。今で10回、100万円になっていた。使ったことはない。いつか誰からなのか分かったら、返すつもりだった。

それを使ったところで、は戻ってこない。

私はずっと、自分が美穂から子供を奪ったのだとっていた。

奈緒が来た翌の昼、美穂のいとこの由紀が訪ねてきた。岐阜からで来た彼女は、挨拶もそこそこに廊を抜け、寝のでち止まった。

ベッドの掛け布団には、しわひとつなかった。脇の棚に呼吸器があり、ホースを巻いて、マスクには袋をかけてあった。

「あの子、これがないといられなかったでしょう」

由紀は械を見たまま聞いた。

「持っていかずに、どうやって暮らしてるの」

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「向こうで、しいのを用してもらったそうです」

「誰に?」

「そこまでは」

由紀は振り返った。鞄を持つに力が入っていた。

「そんな友達、いないのよ。あの子、仕事へって帰るだけで、私以、誰とも付きってなかった」

私は何も言わなかった。由紀はベッドの端に腰をろし、畳んである寝着にを置いた。

「5に来たとき、いろんな話をしたの。子供のころのこと、おばさんのこと、くんのこと。細かいところまで、よく覚えてた」

寝着の袖を指でなぞっていた。

「最に、ひとつ頼まれた。約束もした」

「何をですか」

「今は言えない。でも、あのとき何か気づくべきだったのかもしれない」

顔をげた由紀の目が赤くなっていた。

「直さん。美穂は、どこにいるの」

「岐阜に」

由紀はそれ以聞かなかった。玄関で靴を履くと、戸にをかけたまま言った。

「私、直さんのこと、ずっといいだとってた」

続く言葉はなかった。

の音がざかってから、寝に戻った。呼吸器のマスクをに取った。触れていたところだけ、縁がっぽくなっている。隠してしまえばいいのにといながら、同じ所へ戻した。

午、信用庫で自分の貯をろし、駅へった。翌朝、名古へる切符を買った。そこから先は、着いてから考えるつもりだった。

帰ってと切符を卓に置き、1ほど眺めていた。

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私が逃げても、捜索は止まらない。淵から美穂が見つかったとき、なぜあそこにいるのか、誰が話すのだろう。

あのの板も、次に流されたら、それきりになる。

切符を破り、ごみ箱に入れた。

夜、戻り淵へった。かりで、の巻いている向きが見えた。の板のそばに座り、膝ので両を組んだ。

「美穂。捜しに来たよ」

は絶えずき、同じところへ戻ってきた。

「には、会えたか」

返事を待つように、そのまま座っていた。

美穂がへ戻ってきたのは、のだった。由紀のの助席にいて、私を見ると、さく笑った。髪がくなり、頬が痩せていた。

由紀に支えられてからりたとき、を引きずっているのが分かった。

「ALSなの。診断がついて、1以になる」

玄関脇へ私を呼び、由紀は声を落とした。

「1で暮らせなくなって、戻りたいって。うちへおいでと言ったんだけど、ここがいいって聞かなくて」

美穂は玄関にち、がり框に片をついていた。

母親と、同じ病気だった。

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