"昨日の私を着る女" 第7話
「何してるの? のタイムカードなんか見て」
「あ、いえ……鈴さんが、病院にけたのかなとって」
私の言い訳は、自分でも驚くほど自然に引きつっていた。
同僚の線が、私の元から、私の張った顔へといがってきた。
「……ふーん」
同僚はそれ以何も言わず、淡な横顔で自分のデスクへ戻っていった。
取り返しのつかないミスを犯したという触が、元からじわじわと広がっていった。
*
曜の午。
社内メールの通音が鳴った。
田主任からの個別呼びしだった。
『佐伯、至急、第面談に来てください』
件名のない、い文面だった。
私は胸の奥で鳴る脈拍を必に抑えながら、フロアの隅にある防音のさな個のドアをノックした。
「失礼します」
内には、田主任がで座っていた。
いつもならデスクのに置かれているはずのコーヒー缶はなく、帳だけが固く閉じられて置かれていた。
「座りなさい」
主任の声は、いつもの気のいい司のものとは完全に異なっていた。
私はパイプ子に腰掛け、背筋を伸ばした。
「主任、お話というのは何でしょうか。実は私からも、総務の鈴さんのことでご相談したいことが——」
「佐伯」
主任は私の言葉を平で制した。
その目は、い失望と、困惑に濁っていた。
「今朝番で、鈴さんから相談を受けた」
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「……鈴さんから?」
「ああ」
主任は帳をき、挟んであった枚のメモ用を指先でトントンと叩いた。
「彼女、泣いていたよ。もう会社に来るのが怖いと言ってな」
を鈍器で殴られたような衝撃があった。
「怖い……? 彼女が、ですか?」
「そうだ」
主任はを乗りし、机のに両肘をついた。
「鈴さんの話によると、ここ数週、君から執拗な監と嫌がらせを受けているそうだ」
「私が、嫌がらせを?!」
声が裏返った。
「違います! 逆です! 嫌がらせを受けているのは私の方です! 彼女が毎、私のを真似して——」
「またその話か」
主任は底うんざりしたように溜息をついた。
「のことだけじゃない。鈴さんはこう言っているぞ。佐伯さんは毎、自分が社するなりのてっぺんからの先まで睨みつけるように観察してくる、と」
喉の奥が引きつった。
「曜の午、彼女が退した、君が彼女のタイムカードを勝に引っ張りして調べていたのを見た者がいる。……当たりはあるな?」
「それは……彼女が本当に帰宅したのか、確認したくて……」
「どうして君がの勤怠を確認する必があるんだ?」
主任の徹な問いが、私の喉元に突き刺さった。
「君に事権があるのか? それとも彼女の直属の指導係か? 違うだろう」
反論できなかった。
「それだけじゃない。先週、君が更で鈴さんのロッカーのにち止まり、彼女のバッグをじっと覗き込んでいたのを見た者もいる」
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あの、猫のキーホルダーを確認した瞬だ。
「昨は昨で、鈴さんのデスクのカレンダーを勝に覗き見して、シフトのメモを取っていただろう」
全部、事実だった。
私が自分のを守るために、必で集めようとしていた「相の異常性の証拠」。
そのすべてのアクションが、第者の目には「湿なストーカー為」として完璧に記録されていたのだ。
「違うんです、主任。聞いてください」
私は子の端を掴み、を乗りした。
声の震えを抑えることができなかった。
「鈴さんは、私の以の同僚のにっているんです。私のを着て、私のふりをして、そののアパートの周りをうろついているんです! その同僚は今、ノイローゼになりかけていて、警察に——」
「佐伯」
主任の平坦な声が、私の叫びを遮った。
「君は、自分が何を言っているのか分かっているのか?」
主任の瞳のにあったのは、りではなかった。
気の悪いものを見るような、れみと警戒のだった。
「鈴さんは曜、病院にった、夕方まで実のお母さんと緒に過ごしていたそうだ。彼女の母親からも、体調良で迷惑をかけて申し訳ないと、今朝丁寧な話があった」
「え……?」
「彼女のアリバイを疑う理由がどこにある? そもそも、のふりをして元同僚のを徘徊する? そんな荒唐無稽な話を、私が信じるとうのか?」
言葉がなかった。