みかん小説
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"「ここは新妻の家」と笑う義母へ突きつけた、青い契約書" 第1話

麻酔が切れる寸、喉の奥を焼くような渇きと、腹部を突き刺す鈍痛で目が覚めた。

井の無質ない蛍灯。 規則な図の子音だけが、夜の病にく響いている。

首をわずかに傾け、ベッドの脇に置かれた丸子に線を向けた。 誰もいない。 パイプのには、私が脱ぎ捨てたカーディガンがさく丸められているだけだった。

……わかってはいた。最初から期待などしていなかった。

数、卵巣腫瘍の摘術に関する同を突きつけたときの、夫・浩司の苛った横顔が脳裏に蘇る。 「良性の腫瘍を取るだけだろ? なんで平に俺がわざわざ会社を休んでち会わなきゃいけないんだよ」 「来週から張なんだ。いいなんだから、自分の体くらい自分でなんとかしろ」

テレビの画面から度も目をさず、夫はペンを乱暴にらせると、サイン済みの同を私の胸元へ放り投げてきた。 結婚して15。 命に関わるかもしれない術の夜に、夫は病院に顔すら見せなかった。

「佐藤さん、気がつかれましたか? 気分はどうですか」

巡回に来た夜勤の護師が、音を忍ばせて入ってきた。懐灯のをに落としながら、点滴の落ちる速度を確かめている。 乾ききった唇をかすかにかし、 「……丈夫です」 と掠れた声で返した。

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護師は血圧計のベルトを私の腕に巻きながら、どこか気の毒そうな目を向けた。 「あの、ご族の方には無事に術が終わったこと、病院からお話を入れておきましょうか? 昼もどなたもお見えにならなかったので、きっとご配されているかといますし」

その親切が、刃物のように胸をえぐる。 配など、しているはずがない。 「いいえ、結構です。夫はで仕事ですし、義理の両親も齢ですから」

嘘だった。 みっともなくて、惨めで、に本当のことなど言えるはずがなかった。

護師が静かに病をていくと、再びい静寂が戻ってきた。 腹部の傷がズキズキとを帯びて痛む。 痛み止めの点滴が追加されているはずなのに、たい隙がの奥底に吹き抜けていく覚は消えない。

気を紛らわせたくて、枕元に置かれていたスマートフォンにを伸ばした。 画面を点灯させると、いくつかの着信とメッセージアプリの通が並んでいる。 そのに、見慣れない通の束があった。

義妹の恵子からだった。 親族だけのグループチャットに、連続して写真が投稿されている。 番のメッセージには、嘲笑うような言が添えられていた。

『お姉さんは見ないでね(笑)』

臓が嫌な音をててねた。 「見ないで」と言いながら、わざわざ私が参加しているチャットに送りつけてくる悪。

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震える指先で、その通をタップした。

そこに広がっていた景を、私の脳はすぐには理解できなかった。

ハワイの、どこまでも澄み渡った青い。 名ホテルの広々としたバルコニー。 満面の笑みを浮かべる義母、義父、義妹とその夫。 そして、その央にっていたのは、張のはずの夫・浩司だった。

夫は、15の結婚活で私に度も見せたことのないような、とろけるような笑顔を浮かべていた。 その腕が引き寄せているのは、30代半に見える見らぬ若い女だった。 ふんわりとしたいワンピースのからでも、女の腹がきくせりしているのがはっきりとわかる。臨い妊婦の腹だ。

テーブルのには、華やかに飾り付けられたケーキと、トロピカルカクテルのグラス。 プレートには、チョコレートの文字でこうかれていた。

『Welcome Baby Sato』

義妹の恵子のメッセージが続く。 『ハワイ最! ついに佐藤の跡継ぎがまれるよ! 浩司お兄ちゃん、族全員招待してくれて本当にありがとう! ママもパパもび!』

喉の奥がカラカラに乾き、息の吸い方を忘れてしまった。

――張? ――緊急の仕事?

全部、嘘だった。 私がでたい術台にがり、麻酔の恐怖に震えながら腹を切られていたまさにその瞬。 夫は、とそのお腹の子供を連れ、義族全員をハワイへ引き連れて豪遊していたのだ。

義母も、義父も、義妹も。 全員がっていた。

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