"「妹の祝いだ50万出せ」と言った夫の裏の顔" 第10話
そして、私からをむしり取ることだけは、全員致で当然の権利だと信じ疑わなかった。
私はエプロンのポケットにを入れ、スマートフォンの画面に触れた。 赤い録音マークが、静かに、確実に、秒数を刻み続けている。
「……なるほど。よく分かりました」
私の声があまりに平坦だったせいか、義母は気そうに眉をひそめた。
「な、なによ。き直るんじゃないわよ。とにかく、夫を責めるんじゃないよ! 夫をの女にらせたのは、あんたの至らなさなんだからね!」
その、寝のドアがガチャリと音をてていた。
のそのそとてきた夫の顔は、見るもなく気に変していた。 目は血り、唇は刻みに震えている。 片に握られたスマートフォンの画面には、通話履歴が真っ赤に並んでいた。
「……夫、どうだったの? 誰か貸してくれそうかい?」
義母が慌てて駆け寄ると、夫は力なく首を横に振った。
「……ダメだ。同期のやつらも、先輩も……40万なんて急に貸せるわけねえだろって……」
「そんな……! 会社の同僚でしょ!? 課のお願いじゃないの!」
「課だからだよ! 部に借なんか頼めるかよ! 噂が広まったら発で懲罰委員会きだ!」
夫はを抱え、に崩れ落ちるように座り込んだ。
タイムリミットは、の正午。 翔太さんの通告通り、正午までに40万円が振り込まれなければ、親族全員への暴、警察への被害届、そして会社役員への直訴が待っている。
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見栄とプライドだけできてきた夫のが、あと20らずで完全に終わるのだ。
夫は虚ろな目で宙を見つめていた。 だが、その線がふと、リビング央にち尽くす私を捉えた瞬、濁った瞳に醜悪なが戻った。
「……おい」
夫はうようにしてソファにをかけ、私を見げてきた。
「由美……お、持ってるだろ」
「……何のこと?」
「独代の定期預だよ! お、結婚するの貯を崩さずに持ってるって言ってたよな!? 300万くらいあるはずだ!」
空気が、再び凍りついた。
義母の目が、カッと見かれた。
「まあ! あんた、そんな隠し持ってたの!? 嫁のくせに、自分の貯をし惜しみしてたっていうの!?」
義母は夫の横からを乗りし、まるで宝のを見つけたかのように甲い声を張りげた。
「聞きなさい、由美! 今すぐその定期預を解約してきなさい! 40万……いや、どうせなら100万ろしなさいよ! 夫の借を全部綺麗にして、美たちにも倍にして返してやれば、丸く収まるじゃないの!」
「……私が? なぜ?」
私の乾いた問いに、義母はさも当たりだと言わんばかりに両を広げてみせた。
「夫婦でしょうが! 夫の借は妻の借よ! 夫のピンチを救うのが、内助の功ってもんじゃないの! あんたが40万肩代わりすれば、夫の会社でのも守れるし、美のメンツも保てるのよ! これ以、このを引っ掻き回すんじゃないわよ!」
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夫もすがるように、私の元へを伸ばしてきた。
「頼むよ、由美……! の昼までなんだよ! 40万さえ払えば、翔太のやつも引きがる! 奈緒とのことも、あれはほんの遊びだったんだ! おがを面してくれたら、あいつとは綺麗サッパリを切るから! なあ、頼むよ、妻のおが助けてくれなきゃ、俺は首を吊るしかないんだよ……!」
膝をつき、けない涙を流しながら私の部着の裾を掴もうとする夫。 そのろで、「嫁の義務だ」「恩らず」と騒ぎてる義母。
その景を、私はまるで劇の客席から眺めているような覚で見つめていた。
りも、しみも、悔しさも、何つ湧いてこなかった。 のにあるのは、ただ圧倒な「無」だった。
の結婚祝いを盗み、と級温泉旅館に泊まり、級計を買い与えた夫。 その事実をりながら、からプレゼントを受け取り、息子の裏切りを押しした義母。 そして、追い詰められた最の瞬に、裏切られた妻の貯からそのツケを払わせようとする母子。
このたちにとって、私はですらなかったのだ。 痛覚を持たず、を持たず、ただ都よくを吐きし、どんなも黙ってみ干す便利なサイフ。 それが、このでの私の10だった。
私は歩、ろへがった。 夫のが空を切り、フローリングのに虚しく落ちる。