"「妹の祝いだ50万出せ」と言った夫の裏の顔" 第8話
「……母さん、そうはいかねえんだよ」
夫が顔を覆った指の隙から、うめくような声を漏らした。
「翔太の親父さん……うちの会社の役員と学の同期なんだよ……。あいつが本気で親父さんにチクったら、俺の課のポストどころか、会社にいられなくなる……!」
「えっ……!?」
義母の顔が、今度こそ真っ青に染まった。 世体。息子の肩き。所への自。 義母が涯をかけて執着してきた「誇らしい男」のメッキが、音をてて剥がれ落ちようとしていた。
「ど、どうするのよ夫! 40万、払えないの!?」
「払えるわけねえだろ! 貯なんかとっくにねえよ! カードのキャッシング枠も全部使い切ってんだよ!」
「なんでよ! あんた毎あんなに派なお料もらってるじゃないの!」
「付きいだよ! がかかるんだよ!」
見苦しい親子の鳴りい。 私はその醜悪な景を、え切ったで見つめていた。
預かった40万だけではない。 夫はこれまでにも、私のらないところで額のを浪費し、借をねていたのだ。 そして、その穴埋めのために、妻である私のカードを狙い、妹の祝儀にまでをつけた。
夫は急にガタッとちがると、私の目のを通り過ぎ、寝へ向かった。
「どこへくの」
私が声をかけると、夫は振り返りもせずに吐き捨てた。
「うるさい! の面だよ! 誰かに借りられるか話してくるんだよ!」
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寝のドアが乱暴に閉まり、から鍵をかける音がした。 けない男。 追い詰められてなお、現実を受け止められず、そのしのぎの嘘をねようとしている。
リビングに残されたのは、私と義母のだけになった。
私は何も言わず、散らかったテーブルのを片付け始めた。 倒れたビール缶をゴミ箱に捨て、布巾でこぼれた液体を拭き取る。 淡々と、械のようにをかす。
私ののは、先ほどのインスタグラムの画像でいっぱいだった。 あの画像に写っていた女の。 そして、夫が「接待だ」と言い逃れしようとした、箱根の温泉旅館。
夫が嘘をつく、必ず残す痕跡がある。 見栄っ張りで、細かい経理の処理ができない夫は、領収や細を処分するのが極端に杜撰だった。 「いつか経費で落とせるかもしれない」という浅ましい計算から、ポケットやカバンの底にレシートを溜め込む悪癖があるのを、私は10の結婚活でり尽くしていた。
私は布巾を置くと、夫がリビングの子の背もたれに脱ぎ捨てていったスーツの着にを伸ばした。
「ちょっと、由美! の着を勝に触るんじゃないわよ!」
義母がキーキーと騒ぎてるのを完全に無し、私は内ポケットに指を滑り込ませた。
指先に触れる、いの触。
引きすと、それはつ折りにされた、細いと、質なでできた領収だった。
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付は、先週の曜。 まさに、夫が美から40万円を受け取った翌の付。
発元には、達な文字でこう印刷されていた。
『箱根羅温泉・〇〇別邸』
額――23万8,000円。 但しきには「ご宿泊代として」。
そして、その領収にホチキス留めされていたクレジットカードの控え。 利用細の署名欄。 そこには、夫の汚い字ではなく、女性特の丸みを帯びた、流れるような跡でサインが残されていた。
『 奈緒』
指先が、たく凍りついた。
奈緒。 見覚えのある名だった。 夫が半ほどから「の取引先の担当者」だと言って、頻繁に週末のゴルフや夜の会の実に使っていた名。
取引先でも何でもなかった。 夫は妹の祝儀から抜いた24万円を、この女との泊旅にそのまま注ぎ込んでいたのだ。
さらに、領収の裏には、鉛でさなメモきが残されていた。 『奈緒の誕プレゼント・カルティエ計 残決済 15万円』
24万と15万。 美から預かった40万円の現は、綺麗さっぱり、この女の温泉旅と級計へと姿を変えていたのだ。
胃の奥から、ドス黒い吐き気が競りがってきた。 りではない。 これほどまでに浅ましく、愚かで、底の抜けたと10も同じ根ので暮らしてきた自分自に対する、猛烈な嫌悪だった。
私はその領収と細を、スマートフォンのカメラで接写した。
が入らないよう、角度を変えて、文字が鮮に読めるように、何枚も。