"「妹の祝いだ50万出せ」と言った夫の裏の顔" 第7話
「うるさい! わめくな!」
夫は突然、逆してテーブルを拳で叩いた。 ガチャン、と空のビール缶が倒れ、茶褐の雫がいクロスに染みを作っていく。
「ちょっと支払いのタイミングがズレただけだろうが! 俺だって忙しいんだよ! 会社の営業で数字追われて、おらの旅の配どころじゃなかったんだ! ちょっと元のを用てるためににかしただけだ! でちゃんと穴埋めするつもりだったんだよ!」
「にかした……?」
翔太さんが、をうようない声で呟いた。 その鏡の奥の瞳には、かつて見たことのない酷なが宿っていた。
「夫さん。その『にかした先』って、これのことですか?」
翔太さんが自分のスマートフォンを取りし、画面を夫の顔のに突きつけた。
そこに表示されていたのは、先ほど私の元にも送られてきた、あのインスタグラムの投稿だった。
箱根の最級温泉旅館。 部付き呂の湯気。 伊勢老と黒毛牛が並ぶ豪勢な夕。 そして、向かいに座る女の赤いネイルと、テーブルの隅に無造作に置かれた、鮮やかな引の祝儀袋の束。
『最の週末。自由最。』
「なっ……!」
夫の顔から、瞬で血の気が引いた。 唇がワナワナと痙攣し、まるで幽霊でも見たかのように目を見く。
「な、なんでそれを……非公アカウントに……」
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「僕の輩が、あなたの裏アカウントと相互フォローになってたんですよ」
翔太さんは歩、夫へと詰め寄った。
「『田さんの義兄さん、級旅館で豪遊してますよ』って、親切に教えてくれました。僕たちの祝儀袋をテーブルに並べて、女と温泉旅ですか? 僕たちがの空港で途方に暮れて、見らぬたちからたい線を浴びせられているに、あなたはこのおで女と贅沢昧ですか!?」
「ち、違う! これは会社の接待で――」
「接待に祝儀袋を持っていくバカがどこにいる!」
翔太さんの号が、リビングを激震させた。 温だった青が、全の血管を浮かびがらせて夫を睨みつけている。
「夫さん、僕はあなたを許さない。今すぐ40万円をを揃えて返してください。全額です。今こので!」
「だ、だから今元にはねえって言ってるだろ! 週けに面するから――」
「待てません」
翔太さんは徹に言い放った。
「の正午までに、僕の指定座に40万円全額を振り込んでください。1分でも遅れたら、僕の親族全員にこの写真を見せ、警察に被害届をします。それから、あなたの会社のコンプライアンス窓にも、横領と貞為の証拠としてこの画像を提します」
「き、貴様……内のくせに、そこまでやる気かよ!」
「内だからって、犯罪を見逃す筋いはありません。
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きましょう、美」
翔太さんは美のをく引いた。 美は夫を、まるで端の汚物を見るような目で見つめた、度も振り返ることなく玄関へと向かった。 バタン、といドアが閉まる音が、リビングに虚しく響き渡る。
嵐がったの部には、異様な静寂が残されていた。
夫はを抱え、ソファにうずくまっている。 私は腕を組んだまま、微だにせず夫を見ろしていた。
すると、それまで壁際でをあんぐりとけて固まっていた義母が、急に息を吹き返したように甲い声をげた。
「な、なによあの態度は! 翔太さん、ちょっと気すぎやしないかい!? たかが40万のことで、警察だの会社だのって脅して! 内同士の貸し借りに決まってるじゃないの!」
私はを疑った。
「……お義母さん、今なんて言いました?」
「聞こえなかったの!? 夫はちょっとおを預かって、使う順番を違えただけでしょ! 妹の夫のくせに、兄に向かってあんな偉そうな利いて……! 美も美よ、夫にいいように操られちゃって!」
この期に及んで、まだ息子を庇うのか。 の結婚祝いを横領し、浮気相との豪遊に使い果たした息子を、母親は「ちょっと使う順番を違えただけ」と言い放ったのだ。
「夫、丈夫よ」
義母は夫の肩にすがりつき、猫撫で声をした。
「あんな脅し、ただのはったりに決まってるわ。
警察だって民事介入で取りってくれないわよ。会社に言われたって、『妹夫婦とのの貸し借りのトラブルです』って言えばいいのよ」