"「中絶して逃げた」元妻が連れていた、七歳の双子" 第18話
の獄を、帳消しにするつもりも絶対にない」
「ああ。許してくれなくていい」 私は頷いた。
「俺は、おに許されるためにここに来たんじゃない。あの子たちの父親としての義務を、今度こそ途で投げさないと、自分自に証しに来ただけだ」
由美は数秒、私をじっと見つめていた。 そして、さく踵を返した。
「……邪を引かないように、く着替えなさい。養育費を払うが倒れたら、迷惑ですから」
由美は度も振り返らず、舎の軒で待つ子供たちの方へと歩いていった。 その背は、のような怯えも、数ヶのような拒絶の棘も消え、ただ凛として、のる庭に佇んでいた。
がけ、季節はへと移ろいでいた。
社内での私の処遇は、予通り厳しいものだった。 プロジェクトの緊急報告を放棄した責任を問われ、課昇は見送り。 システム統括部から、社内インフラの保守を専とする閑職の部署へと異を命じられた。
だが、私のは議なほど穏やかだった。 残業がなくなった分、毎週末のスケジュールを確実に確保できるようになった。
に度の面会交流は、徐々に形を変えていった。
ショッピングモールのテラス席から、駅のファミリーレストランのボックス席へ。 拓は、私が持参するの図鑑や、簡単な恵の輪に興を示すようになり、折「これ、どうやるの」
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とく言葉を交わすようになった。
それでも、美咲のの壁はかった。 私の正面の席には絶対に座らず、必ず由美の隣に密着し、私がしでもを伸ばすとビクッとを竦めた。
父親というに対する、分の空と恐怖。 それは、どれだけ誠を尽くしても、そう簡単に埋まるものではなかった。
そして、。 の歳の誕がやってきた。
由美から届いたメールには、指定されたのファミレスの席番だけが記されていた。 『子供たちの誕です。だけ、ケーキをべるを取ります』
約束の分、私は指定された郊のロードサイドのファミレスの席に座っていた。 胸ポケットには、さな箱が入っている。 価なゲームでも、派なおもちゃでもない。 拓には丈夫な革製のパスケース、美咲にはさな押しが埋め込まれたヘアゴム。 が学の通学で、常に使えるものだけを選んでいた。
ベルが鳴り、由美が子供たちを連れて入ってきた。 のスプリングコートを着た由美。 そのろから、し背の伸びた拓と、真しいのワンピースを着た美咲が、りでついてくる。
「こんにちは」 拓が、自分からさくをげた。
「……こんにちは、拓くん」 私の胸の奥が、温かいもので満たされる。
掛けのボックス席。
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私の対面に由美と美咲が座り、私の隣に拓が座った。 由美が注文した、イチゴのショートケーキがつ運ばれてくる。
「誕、おめでとう」 私がさな箱をつ、テーブルの端に置くと、拓は嬉しそうに目を輝かせて受け取った。 美咲は、箱を見つめたまま、じっとかなかった。
「美咲、けてごらん」 由美が優しく背を押した。
美咲はおずおずとリボンを解き、からヘアゴムを取りした。 淡いピンクのかすみが閉じ込められた、さなガラス細。 美咲の瞳が、かすかに揺れた。
「……かわいい」 消え入りそうな声だった。
「気に入ってくれたかい」 私が微笑みかけると、美咲はハッとしたようにヘアゴムを握りしめ、再び由美の腕に顔を埋めてしまった。
まだ、無理なのだ。 焦ってはいけない。 この子が私をただの「のおじさん」として受け入れてくれるまで、あと何かかってもいい。 私は私のフォークを取り、自分の分のケーキをに運んだ。
沈黙の、拓が美しそうにクリームを頬張るフォークの音だけが、カチカチと響いていた。
代半ばを過ぎた母親と、歳になった双子。 そして、その輪から半歩を引いて座る、歳の男。 世から見れば、いびつで、奇妙なグループだったかもしれない。 だが、私にとっては、この張り詰めた静けさこそが、嘘のに築かれたどんな族ごっこよりも尊い、本物のだった。