"「中絶して逃げた」元妻が連れていた、七歳の双子" 第12話
母が叫び、机のの類を奪い取ろうとした。 だが、そのを叔父が鋭く制した。
「待ちなさい、かず子」 叔父の声がくなった。 「健、続けろ」
「、母さんは私にこう言いました。『由美は子供をおろして、別の男と逃げた』と」 私は母から目を逸らさず、言葉を紡いだ。
「しかし、それは全て母さんが仕組んだ嘘でした。由美は逃げてなどいません。母さんからの湿な嫌がらせに耐えかね、切迫流産で倒れ、救急搬送されていたんです」
私は鞄から、第の証拠を取りした。 真理さんから預かった、当の産婦科の診断と、母子帳のコピー。
「母さんは、由美が入院していた病にまで押しかけました。『うちの息子の子供じゃない』『をてけ』と鳴り散らし、警察汰になりかけた。そのの記録が、病院のカルテにも残っています」
「嘘よ!!」 母が切り声をげた。 膝ちになり、畳をバンと叩く。
「私がそんなことするわけないでしょ! この子はあの女に洗脳されたのよ! 私を追いして、遺産を巻きげる気なんだわ!」
「じゃあ、これは何だ?」
私は、あの漆塗りの箱から取りした、未封の速達便を机のに叩きつけた。 の私の消印。 そして、母の跡でかれた『同居受取 処分保留』のメモ。
「俺が名古から送っただ。由美宛てのを、母さんが、自分の箪笥の奥に隠し持っていた。
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由美の実から届いた、緊急の入院をらせる報も、も、全部母さんが握り潰した!」
親戚たちの線が、疑から驚愕へ、そして嫌悪へと変わっていく。 従兄弟の妻が、息を呑んで元をで覆った。
「かず子さん……これ、あなたの字じゃない……」
「違う! らない! 私じゃないわよ!」 母の目が狂ったようにに泳ぐ。 額から脂汗が吹きし、入りに塗られたがドロドロに崩れていく。
「兄さん、信じて! 私は健のために……健が自由しないようにとって……!」
「私のために?」 私はたく遮った。
「自分の老の介護員を放したくなかっただけだろ」
胸ポケットから、ボイスレコーダーを取りした。 昨、実の話回線に仕掛けた録音器のデータを、スマホ経由で同期させたものだ。
再ボタンを押した。
ピッと子音が鳴り、静まり返った仏に、ノイズ混じりの音声が響き渡った。
『……もしもし、真理さん?』 スピーカーから流れてきたのは、紛れもない、母の湿で酷な声だった。
『言っておきますけどね、あの子たちを健に会わせようなんてわないことね。あんな棒猫の産んだガキ、佐藤の敷居を跨がせるわけにはいかないのよ』
『健はね、私の言うことなら何でも聞くの。あんたたちがいくら騒いだところで、親戚には「由美が男を作って逃げた」
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って話を通してあるんだから。今さら真実を話したって、誰も信じやしないわよ』
『老い先い未をいじめる悪女として、を歩けばいいのよ。度と話してこないで!』
ガチャリと乱暴に受話器が叩きつけられる音で、録音は途切れた。
仏は、完全なの静寂に包まれた。
線の煙だけが、くちっている。 誰もをかない。 誰も、母を見ようとしない。 目をわせることすら穢らわしいと言わんばかりに、親戚全員が線を畳に落としていた。
「……あ、ああ……」
母の喉から、空気の抜けるような音が漏れた。 両を畳についたまま、がくがくと震えている。
「かず子」
叔父の、をうような声が落ちた。
「お……実の息子の子供を……自分の初孫を、そんな理由で切り捨てたのか?」
「に、兄さん……違うの、あれは、カッとなって……」
「黙れッ!!」
叔父が机を拳で殴りつけた。 茶碗がね、茶が畳のにこぼれ落ちる。
「佐藤のの恥晒しが! 夫の回忌の席で、よくもまあ抜け抜けとそんな嘘百を並べてられたものだ! 健を騙し、の嫁を追いし、あまつさえ脅迫までしていたとは……恥をれ、恥を!」
「兄さん! 捨てないで、兄さんまで私を見捨てるの?!」 母はいつくばるようにして叔父の元に縋り付こうとした。
だが、叔父は着物の裾を無に引き抜き、ちがった。
「見捨てるも何もない。今限り、本はおとの縁を切る。度と敷居を跨ぐな。法事のやり直しも、仏壇の管理も、健と直接話す。