"「中絶して逃げた」元妻が連れていた、七歳の双子" 第11話
「うむ。健も派に会社で勤めげているようだし、だな」 叔父は満そうに頷き、仏壇へをわせた。
読経のために呼んだ菩提寺の僧侶が経をげ、鉦の音が内に響き渡る。 親族たちが順番に焼台へみ、煙をてる。 母は目を伏せ、ハンカチを目元に当てて、いかにも痛な未を演じきっていた。
僧侶が退席し、仏の襖が閉められた。 苦しい宗教儀式が終わり、親戚たちのに、ほっとしたような弛緩した空気が流れ始める。
「さあ、皆さん、お斎にしましょう。どうぞ、お膳を広げてくださいな」 母が待ってましたとばかりにちがり、座敷机に豪華な折詰を並べさせようとした。
だが、叔父が々しくをいたのは、その瞬だった。
「……ところで、かず子さん」
母のが、ピクリと止まった。
「は、はい、何でしょう、兄さん」
「先、おから話があった件だが」 叔父は眉にい皺を刻み、隣に座る私をじっと見据えた。
「健。の嫁が、おたちにを無しに来ているというのは本当か」
仏の空気が、瞬で凍りついた。 茶をすすっていた従兄弟のが止まり、親戚たちの線が斉に私へと集する。
母の背が、わずかに張った。 だがすぐに、母はすがるような表を作って叔父のに膝をめた。
「そうなんです、兄さん! 恐ろしいことよ。
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に勝にてったあの女が、急に健のに現れて……子供ができたから養育費を寄越せって、脅迫まがいのことを言ってきているんです!」
母の声が、劇のヒロインのように震えていた。
「健もすっかり怯えてしまって……私たちが守ってきたこののおを、根こそぎ奪う気なんです。警察に相談するべきだと、さっきも話していたところで」
親戚たちのから、いため息と囁き声が漏れした。 「やっぱり、あの嫁は最初から目当てだったのか」 「健くん、が良すぎるから騙されちゃったのね」 「とんでもない女だ、弁護士をてて追い払わなきゃ」
同とりの線が、私に向けられる。 母の惑通りだった。 親族という閉鎖空、老を方につけた世体の包囲網。 ここで私が否定すれば「母親を裏切る親孝者」の烙印を押され、肯定すれば由美は永に悪女として葬りられる。
も、こうして母は私を逃げのない袋に追い込んだのだ。
私は、自分のに置かれたたい緑茶を見つめていた。 胃の腑が、ギリギリと音をてて軋む。
「健」 叔父が、厳格な声で私を呼んだ。
「おもを過ぎた男だ。母親守れんでどうする。そんな性悪な女の言うなりになるな。佐藤のを汚すような真似は、本として許さんぞ」
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母が、ハンカチのから私を見た。 その瞳の奥には、勝ったという確信と、「さあ、私の言う通りにしなさい」という無言の脅迫が張り付いていた。
私は、ゆっくりと息を吐きした。
肺の奥に溜まっていた、分の澱を全て吐きすように、く、く。
そして、座っていた座布団からり、畳のに正座し直した。
「叔父さん」
私の声は、驚くほど静かだった。 震えも、鳴り声もなかった。
「今、父さんの法に集まっていただいたのは、供養のためだけではありません。佐藤の名を汚し、として許されない罪を犯し続けてきたを、皆さんので告発するためです」
母の眉が、そうにねがった。
「健、何を言っているの? 法事の席でくだらない冗談はやめなさい」
「冗談じゃない」
私はスーツの内ポケットから、黒い革のケースを取りした。 からした枚の類を、座敷机の央、叔父の目のに滑らせた。
「これは、昨発されたDNA鑑定です」
机のに落ちたを、叔父が怪訝そうにに取った。 老鏡の位置を直し、文字を追う。
「……DNA鑑定?」
「その鑑定にある通り、由美が育てている歳の双子は、違いなく私の実子です」
ざわり、と親戚たちがを乗りした。 「実子って……」 「歳ってことは、婚するに……?」
母の顔から、サーッと血の気が引いていくのが見えた。
のの肌が、気に変していく。
「な、何よそれ! 偽造よ! そんな切れ、いくらでも誤魔化せるじゃないの! 兄さん、騙されないで、この子はおかしくなっているのよ!」