"「中絶して逃げた」元妻が連れていた、七歳の双子" 第3話
背で「やめなさい! 親の部を勝に漁るなんて親孝よ!」と階段を叩く音が響く。
埃っぽい母の部。 防虫剤のツンとした匂いが充満している。 私は迷わず、部の隅に置かれたな桐箪笥に向かった。
段目、段目。 母が切にしている価な島紬や訪問着が並んでいる。 父がんだの遺族と、私が毎母の座に振り込んでいる万円の活費から買い集められたものだ。
段目の引きしの奥。 着物のたとうのに、見慣れない漆塗りの箱が隠されていた。 さな真鍮の京錠がかかっている。
私は階へり、具箱からマイナスドライバーを持ちしてきた。 階段をがってくる母が、私の元を見て息を呑む。
「健! やめなさい! それはお父さんの形見の――」
バキッ、と鈍い属音が響いた。 留め具がごと引きちぎれる。
箱の蓋をけた。
に入っていたのは、父の形見などではなかった。 輪ゴムで束ねられた、数冊の預通帳。 そして、茶封筒。
その封筒の束の番にあったものを見た瞬、私の界が真っ赤に染まった。
赤褐の、速達のスタンプ。 差は、の私の名。 張先の名古のビジネスホテルから、この実の由美宛てに送った封だった。
封は、切られていなかった。
裏返すと、郵便局の受領印の横に、母の跡でさくメモが残されていた。
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『同居受取 処分保留』
私の指が、激しく痙攣した。 震えるで封筒を引き裂く。 からてきたのは、の私の、けないほど拙い直のだった。
『由美へ。今週末には度京へ戻れる。母さんとのことも、これからの活のことも、ちゃんとで話そう。母さんには悪気はないんだ。俺がに入るから、頼むから待っていてくれ』
届いていなかった。 私が由美に宛てた唯の言葉は、この箱の底で、窒息させられていたのだ。
だが、それだけではなかった。
速達の封筒のから、もう通、別のがてきた。 便箋の端は擦り切れ、何度も封された痕跡があった。 差の欄には、見覚えのある端正な文字。 由美の実の姉、真理さんの名だった。
消印は、の初。 由美がてったとされるの、わずか。
を広げた私の目に、最初のが鋭利なガラス片のように突き刺さった。
『佐藤健様。 妹の由美は現、切迫流産の兆候があり、私の自宅くの病院で絶対静の状態で入院しています。双子の胎児の拍は確認できていますが、母体ともに極めて危険な状態です。 何度あなたの携帯に話しても、お母様が「健は仕事で忙しい、度とかけるな」と方に切られます。 本当にお母様のおっしゃる通り、あなたはこの子たちを認せず、由美を見捨てるおつもりなのですか? これが最の確認です。
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至急、病院へ来てください』
「……あ」
声にならない音が、私の喉から漏れた。 膝の力が抜け、桐箪笥の角に背を打ちつけながらに崩れ落ちた。
双子。 切迫流産。 絶対静。
由美は、逃げたのではなかった。 の男と浮気をして、子どもを処分したのではなかった。 あのは、私の母に追い詰められ、血を流しながら、で病院のベッドに倒れ込んでいたのだ。
「健……」
部の入りに、母がっていた。 いつのにか狂乱の叫びは消え失せ、その顔には、追い詰められた獣のような浅黒いが差していた。
「母さん……これ、何だ?」
私はを握りしめ、母に向けて掲げた。 がクシャリと音をてる。
「何なんだよ、これ! 由美は入院してたんじゃないか! 俺の子を、双子を、腹ので守ろうとしてたんじゃないか!」
私の絶叫が、古い造の壁を震わせた。 を過ぎたの男が、喉が裂けるほどの声で叫んでいた。
「なんでを隠した?! なんで話を取り次がなかった?! なんで……なんで俺に、『おろして男と逃げた』なんて嘘をついたんだよ!!」
母は数秒、を半きにして私を見つめていた。 だが、その瞳から狼狽が消え、代わりに底れないたさと、歪んだ嘲笑が浮かびがった。
母はゆっくりと腕を組み、壁に寄りかかった。
「……それがどうしたっていうの?」
信じられない言葉が、母のから吐き捨てられた。
「あの子が双子を産んだらどうなるのよ。