みかん小説
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"リフォーム代二百万を払った実家に、他人が住んでいた" 第1話

黒い喪の襟元が、汗でじっとりと首筋に貼りついていました。

父の法が終わったばかりの、ぬるいが淀む午。 お寺の職が引き揚げ、仕し弁当の片付けもそこそこに、親戚たちがパラパラと席をち始めたその瞬のことです。

兄の健が、ぎゅっと固く結んでいた黒いネクタイを乱暴に緩めました。

「さて、と」

ビール瓶を畳のにトンと乱暴に置く音が、静まり返ったにに響きます。

「親父の法も無事に段落したことだし、今のことを決めておこうとう。 この実のと建物は、男である俺が引き継ぐことにしたから」

……は?

を疑いました。 喉の奥に、たいものが引っかかったような覚。

隣に座っていた義姉の真由美が、待っていましたとばかりに元に笑みを浮かべ、わざとらしい猫なで声で言葉をねてきました。

「そうよ。お義母さんでこんな広いに残されたって、庭の入れも固定資産税の支払いも変でしょう? 私たち、もう務に話を聞いてるの。 ここを規模にリフォームして、将来はうちの母も呼んでみんなで暮らそうって。賑やかになっていいでしょう?」

義姉の母親を、このに?

が、すぐにはみ込めませんでした。 父が汗流してローンを払い終え、母とで慈しむように入れしてきたこのを。

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父が息を引き取ってから、まだヶも経っていないこの所を。

母の子は、膝のでしわの寄った両をきつくねたまま、じっと畳の目を見つめていました。 さく縮こまったその背は、親戚たちの線に晒されて微かに震えています。

私はできず、兄の顔を真正面から見据えました。

「お兄ちゃん、それ……お母さんとちゃんと話しったの?」

健はひどく面倒そうに眉根を寄せ、で笑いました。

「話しうって、何をだよ。俺はこのの男だぞ? 男がを継いで親の面倒を見るのは、昔から当たりのことだろうが。 由紀、おはもう嫁にった『佐藤のじゃない奴』なんだから、実のことにを挟むな」

嫁にった。 その言葉を投げつけられた瞬、胃の腑がキュッと雑巾のように絞られる痛みを覚えました。

父が病に倒れてからの半。 週に度、往復かけて病院に通い、母の買い物に付き添い、役所の続きを全部引き受けていたのは誰だったか。

兄は「仕事が忙しい」「会社の付きいがある」と度も泊まり込みの病にすら来ず、義姉に至っては見いに顔をしたのすら最初の数分だけ。 それなのに、父が骨になって墓に入った途端、この傲さです。

「でも、ここは今、お母さんのよ」

「だから、その母さんがじゃ何もできない寄りだから、俺が代わりに仕切ってやってるんだろうが!」

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健の声がの鴨居を震わせました。 親戚たちが気まずそうに目を逸らし、そそくさと荷物をまとめて玄関へ向かっていきます。 誰も波をてたくないのです。 「男がそう言うなら、まあ丸く収まるんじゃないか」 そんな無責任な空気が、苦しく部に満ちていきました。

義姉は勝ち誇ったように、私の顔をじろりと舐めるように見ろすと、母の肩にを置きました。

「お義母さん、これでおの配もりませんからね。 老の面倒は、男の嫁である私がぜーんぶ見てあげますから」

母は何も答えませんでした。 ただ、膝のの喪の布を、指先がくなるほどく、く握りしめていました。

親戚たちが完全に引き揚げ、玄関の引き戸がく閉まったあと。 のには、仏壇の線の匂いと、めきった緑茶の渋い空気だけが残されました。

兄夫婦は「もいから」と、級そうなのエンジンをけたたましく響かせて々に帰っていきました。 産の包みだけが、散らかった座卓のにぽつんと残されています。

私は台所で、震えるで湯みを洗っていました。 蛇から流れるのたさが、じんじんと指先に染みてきます。

悔しさとりで、奥歯がガチガチと鳴るのを止められませんでした。 男だから。 嫁にっただから。

そんな代な呪いのような言葉で、母の居所を力ずくで奪おうとするあのの顔が、かられません。

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