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"結婚記念日に渡された電車の片道切符" 第9話

夫の顔に、最の見栄と恐怖が入り混じる。

「世体が悪いから? 同僚にられたら恥ずかしいから?」

私はたく微笑んだ。

「羽田のロビーで、私に片切符を押し付けたと同じよ。自分のしたことのツケは、自分の名で払いなさい」

踵を返し、波のへ歩きした。

背から、「由美! 待ってくれ! 由美!!」と夫の叫ぶ声が響いたが、度と振り返ることはなかった。

駅の階段をりていく私の取りは、驚くほど軽かった。

たい夜が頬をかすめていく。

もう、何かに怯えることも、誰かの顔を伺って息を潜めることもない。

私のの主導権は、完全に私ののにあった。

庭裁判所の調は、驚くほど静かで、どこまでも無質な空だった。

机を挟んで、私の隣には弁護士。

向かい側には、すっかり気を失った直と、ため息ばかりをついている相方の弁護士が座っていた。

「……納得がいきません」

直が、掠れた声で調委員に向かって絞りした。

「賃貸マンションの賃16万円は、15、すべて私の与座から引き落とされていました。稼ぎの額だって、私の方がい。共財産の預を折半するなんて、あまりに公平です」

夫はまだ、自分が「の黒柱」として庭を養ってきたというにしがみついていた。

弁護士が、さく微笑んで類の束を広げた。

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「では、佐藤さんの奥様がつけてこられた15分の計簿と、通帳の引き落とし履歴をご確認いただけますか」

ドン、とい音をてて机のに置かれたファイル。

私が毎、レシートを1枚ずつ貼り、1円単位で計算してきた活の記録だった。

「費、費、用品代、美咲さんの医療費および学塾の謝。これらはすべて、奥様の座から支払われています。平均にして、約17万5000円です」

弁護士の静な声が、静まり返った部に響く。

「ご主が支払われていた賃を、毎1万5000円以回っています。さらに、過半にわたり、ご主が川莉奈氏との私な遊興費として奥様のカードから流用された額は、判しているだけで98万4000円」

机のに並べられる、領収のコピー。

箱根の旅館。座のフレンチ。表参のブティック。札幌のホテル。

直の弁護士が、気まずそうに鏡のブリッジを押しげ、目を伏せた。

「これらは婚姻費用の清算、および当利得として、財産分与の対象額から厳格に差し引かせていただきます。また、美咲さんの養育費については、裁判所の算定表に基づき、学卒業のまで毎8万5000円。こちらは制執認諾文言付きの調調として作成します」

「きょ、制執……?」

直の顔が引きつった。

与を差し押さえられる能性があるという現実が、ようやくその鈍いに届いたようだった。

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「由美……」

夫が、すがるような目で私を見つめてきた。

「頼むよ。預は全部おに渡すから、調を取りげてくれないか? 婚だけは……勘弁してくれ。会社にもバレかけてるんだ。バツイチになって、養育費を差し押さえられるかもしれないなんて噂がったら、俺はもう次の昇のが完全に消えるんだよ……!」

どこまでいっても、この男ののにあるのは「自分の保」と「世体」だけだった。

私が15、どれほどのいで計をやりくりしてきたのか。

娘がどれほどの寂しさを抱えて育ってきたのか。

そんなことには、1ミリの関もないのだ。

「直」

私は、膝ので揃えた自分の指先を見つめながら、静かに告げた。

「あなた、羽田のロビーで私に言ったわよね。『おは部者だ』って」

直の喉が、引きつるように鳴った。

「その通りよ。私はもう、あなたのの部者になるの。サインしてください」

調委員から差しされた調に、私は迷わずペンをらせた。

直は震えるでペンを握り、まるで自分の刑宣告に署名するかのように、力なく名をき込んだ。

カチリと、万のキャップが閉まる音。

15の婚姻関係が、ので完全に消滅した瞬だった。

裁のい玄関をると、京の空はどんよりとしたのに覆われていた。

弁護士と別れ、霞が関の駅へ向かって歩きそうとしたとき、背からりの音が追いかけてきた。

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