"結婚記念日に渡された電車の片道切符" 第4話
「だいたいな、おにも原因があるんだよ!」
「……私に?」
「ああそうだよ! に帰ってくればスーパーの特売チラシの話、美咲の塾の謝の話、ゴミの分別がどうだとか……話してて息が詰まるんだよ! おといても、ちっとも面くないんだ! 女としての潤いも気も全部失くして、毎のことばかり計算しやがって!」
喉の奥が、ぎゅっと締め付けられた。
女としての潤い。
それを奪ったのは誰だ。
誰がこのの計を破綻させないために、1円単位の特売肉を買い、自分の化粧すらドラッグストアの数百円のものでしてきたとっているのか。
「莉奈は違うぞ。俺の話をちゃんと聞いてくれるし、俺を男としてててくれる。おみたいに値踏みするような目で俺を見ることもない!」
夫は唾をばしながら言い放った。
私は、すっとちがった。
りで叫ぶことも、泣いてすがることもなかった。
ただ、目のにいる男が、あまりにもっぺらく、滑稽に見えた。
「そう。じゃあ、これからは全部その莉奈さんにててもらえばいいじゃない」
「……は?」
「計の管理は、今で完全に分けます。あなたの携帯代も、保険料も、遣いも、全部自分の与座から引き落として。私の名義でて替えることは度とないから」
「おい、何を勝なこと言って――」
「それから」
私は寝へ向かいながら、背越しに告げた。
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「あの旅の予約記録、もっと詳しく見せてもらったわよ」
夫の背が、わずかに張るのが見えた。
翌朝、夫が勤したの静まり返ったリビングで、私は旅予約サイトのログイン画面をいていた。
夫が普段使っていたタブレット。
パスコードは、昔と変わらず美咲の誕だった。
予約履歴の奥くまでスクロールしていく。
羽田空港で夫が言った言葉が、の奥でこびりついてれなかった。
『急遽、札幌のクライアントとの会が入った』
『莉奈は先方の担当者とも顔見りだから、同させることになった』
嘘だ。
そんなことは最初から分かっていた。
だが、予約の「作成」のタイムスタンプを見た瞬、私の指先は完全に凍りついた。
札幌のリゾートホテル。
エグゼクティブツイン、2名分。
ディナーのペアチケット付きプラン。
予約が完していたのは――今から2ヶ。
夫がリビングで、笑顔で私にこう言ったの、さらに3週だった。
『由美、もうすぐ結婚15周だな。久しぶりにふたりででもかないか?』
あのの夫の顔が、鮮に蘇る。
照れくさそうに笑いながら、私の肩にを置いてきたあの触。
私はあの言葉を真に受けて、何週もから楽しみにしていたのだ。
職の同僚に「久しぶりに夫と旅なんです」と嬉しそうに話し、しいコートを買い、婚旅でったさなの席まで自分で話して押さえた。
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だが、真実は違った。
夫は最初から、莉奈とふたりでへく計画をてていた。
私ののチケットを取ったのは、私を連れてくためではない。
私のマイルの残を勝に使い、分の航空券を私のカードで決済させ、庭の浮いたで莉奈の豪華なホテル代を捻するため。
そして何より、「妻と記旅にく」という完璧なアリバイを作り、職や周囲に怪しまれずに女と3を過ごすため。
羽田空港で私を追い返したのは、急な予定変更などではない。
最初から、あそこで私を捨てるはずだったのだ。
「……っ」
胃の奥から、酸っぱいものが込みげてきた。
洗面所に駆け込み、蛇をひねってたいで顔を洗う。
鏡に映った自分の顔は、青ざめ、唇が刻みに震えていた。
単なる浮気ではない。
15連れ添った妻のを、記を、自尊を、すべて女との事の隠れ蓑として利用し、踏みにじったのだ。
許せない。
これ以、この男と同じ空気を吸うことすら耐えられなかった。
私はそのの午に休暇の申請をし、バッグを掴んでをた。
向かったのは、職の先輩から紹介されていた、にあるさな法律事務所だった。
「初めまして、佐藤さん。弁護士のです」
物腰の柔らかい40代の女性弁護士が、温かいお茶をしてくれた。
私は震えるで、プリントアウトした予約記録、カードの利用細、そして夫とのLINEのやり取りをデスクに並べた。