"意識のない母の家を売る夫、その時病室のベルが鳴った" 第10話
「ちょうどいいところに来たわ! あなた、昨夜をていったんですってね!? 浩司から聞いたわよ! 夫を放りし、子供を連れって、母親の財産に目が眩んで実にてこもるなんて……なんて浅ましい嫁なの!」
ろの叔母たちも、同調するように々に責めててくる。
「そうよ真紀さん、浩司さんはあんなに真面目に働いてるのに」 「親の介護は夫婦で支えうものよ。で抱え込んで実をどうこうするなんて、筋が通らないわ」
い目で見つめてくる親戚たち。 廊のあちこちから、好奇と軽蔑の線が私に突き刺さる。
かつての私なら、周囲の目を気にして、恥ずかしさに耐えかねてそのから逃げしていたかもしれない。 「波をてないように」と、をげていたかもしれない。
けれど、今の私には、守るべき母と娘がいる。 失うものなど、何ひとつなかった。
私はカバンのから、昨夜プリントアウトしておいたA4の用を枚、引き抜いた。
「皆さん、お揃いでちょうどよかったです」
私は用を広げ、親戚たちの目のに突きした。
「これ、夫の個座の取引履歴です。方の公な照会データです」
「な、何よそれ……関係ないものを持ちして……!」
義母の顔が、サッと変わった。
「関係なくありません。お義母さん、先週の曜、浩司さんの座からあなたのゆうちょの座へ、きっかり百万円が信送されていますね」
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ざわり、と周囲の空気が揺れた。
「ひゃ、百万円……?」
叔母のが、訝しげに義母の顔を覗き込んだ。
「千鹤さん、浩司ちゃんから百万円も貰ったの?」
「そ、それは……! 浩司が、頃の謝だって……親孝で遣いをくれただけよ! 親が息子からをもらって何が悪いのよ!」
義母は必に胸を張ろうとしたが、その声はずり、泳ぐ線が罪の識を雄弁に物語っていた。
「親孝の遣い?」
私は歩、義母に詰め寄った。 逃がさない。この女が踏みにじってきたもののさを、のに晒してやる。
「母が倒れてICUで管に繋がれていたその、浩司さんは母のを勝に売る契約を結び、買主から付として百万円を受け取りました。その百万のうち、百万は亮介さんの借返済に、百万円はお義母さんのリボ払いの返済に、そののうちに分けされたんです」
「な……!」
叔母たちが息を呑み、わず義母から歩距を取った。
「嘘よ! でっちげよ! 私はそんなことらないわ!」
「らない? 昨夜、浩司さんが全部自しましたよ。音声データも録音してあります。聞きますか? 今ここで、スピーカーで再しましょうか?」
私がスマートフォンを取りす仕をすると、義母はヒッとい鳴をげて両で顔を覆った。
「の親がにかけている横で、そのを売りばしたを貪りうのが、あなたの言う『親孝』なんですか? 病院の廊で『識がない今のうちに売れ』と笑っていたのが、あなたの言う『族の支えい』なんですか!?」
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談話は、を打ったように静まり返っていた。
義母の方をするために連れてこられたはずの親戚たちが、見る見るうちに軽蔑と嫌悪の表へと変わっていく。
「千鹤さん……あなた、本当にそんなおを……?」 「の命をなんだとってるのよ……恥ずかしい……」
「ち、違うのよ! 私は浩司に騙されたの! 浩司が丈夫だって言ったから……!」
醜悪な擦り付けい。 昨まで息子を「自の男」と持て囃していた母親が、保のために真っ先にその息子を切り捨てようとしている。
「お帰りください」
私は徹に言い放った。
「これ以ここで騒ぐなら、警察を呼びます。それから、野さんという買主の方をごですね? 浩司さんが受け取った付の返還期限は、の正午です。返せなければ、浩司さんは詐欺罪で刑事告訴されます。……息子の配なら、警察署の留置のでなさったらどうですか」
義母はをパクパクと魚のように閉させ、やがて悔しさと屈辱で真っ赤になった顔を歪めると、親戚のを振りほどいてエレベーターへとりっていった。 親戚たちも、私にをげることすらできず、逃げるようにを追った。
静まり返った廊で、護師が静かに歩み寄ってきた。