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"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第12話

その細い指先が、ハンドルを握りしめながら刻みに震えている。 赤信号でした、由がぽつりと呟いた。 「……やっぱり、来たのね」 「由……?」 「お兄ちゃんたち、お母さんが配していた通りのことを、全部やってくれたわ」 「体、何の話なんだ? 義母さんが、正さんたちの何を配していたっていうんだ」 由は青信号を見据えながら、アクセルを踏み込んだ。 「お母さんは、すべて見抜いていたのよ。お兄ちゃんの……本当の狙いをね」 「本当の狙い……?」 「に着いたら、全部見せてあげる。お母さんが私たちに残してくれた、本当の遺品を」

自宅のアパートへ辿り着いた由は、まるで何かに追われているかのような切迫した取りで階段を駆けがり、玄関の鍵をけた。 靴を脱ぎ捨てるようにして廊を通り抜け、振り返った由は、息を乱しながら俺を見つめた。 「健太郎さん、覚悟はいい? これから見るものは……きっと、あなたを激しく驚かせるとう」 俺は無言でく頷いた。ここまで来たら、義母が残した真実のすべてを受け止める覚悟はできていた。

リビングに入ると、由は真っ直ぐに仏壇のへとみた。 仮祭壇に飾られた美代子さんの遺ので、由は静かに両をわせた。 「お母さん……が来ました。健太郎さんに、全部お話ししますね」 写真のの義母は、いつものように穏やかで慈に満ちた笑顔を浮かべていた。

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だが今の俺には、その優しい微笑みの奥底に、耐えがたいと決の覚悟が秘められていたことが痛いほど伝わってきた。

由は仏壇のに正座し、番のさな引きしを静かに引いた。 そのから取りされたのは、普段見慣れない、細かな彫刻が施された古い真鍮製のさな鍵だった。 「……鍵?」 「ええ。ヶ……お母さんの病状が急激に悪化し始めた頃、病できりになったに、お母さんがこの鍵を私ののひらに握らせてくれたの。『由、いざというが来たら、この鍵を使いなさい。そして、健太郎君に見せるのよ』って」 由から渡された真鍮の鍵は、のひらに乗せると、見た目以のズッシリとしたたいみがあった。 「ついてきて」 由はちがり、寝へと向かった。 クローゼットの扉をけ、奥くに仕い込まれていた装ケースのさらに裏側から、埃を被ったさな属製の提げ庫を引きしてきた。なスチール製で、表面には精巧な唐模様が刻まれている。 由が震えるで鍵穴に真鍮の鍵を差し込み、へと回す。 カチリ――。 静まり返った部のに、乾いた属音が響き渡り、庫の蓋がゆっくりと持ちがった。 には、何にも分類された類の束と、数本のカセットテープ、そして通のい封筒が、然と収められていた。

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「これを見て……」 由が最初に差ししてきたのは、そのい封筒だった。 表には、義母の達で几帳面な跡で、『健太郎君へ』と確かにかれていた。 俺の臓が鐘を打ち始めた。震える指先で封を切り、から便箋を引きす。万の濃紺のインクで綴られた義母の遺言めいたが、目にび込んできた。

『健太郎君へ。 もしあなたがこのを読んでいるとするならば、私の最も恐れていた配が、しくも現実になってしまったということなのでしょう。 どうか、正の本性を見抜いてください。 あの子は、私の老のための切な蓄えを、自らの私利私欲のために狙い続けています。 今から、私が脳梗塞で倒れてもない頃、正は『男として母さんの通帳を預かり、しっかり管理してあげる』と言って、私のメインバンクの通帳と印鑑を持っていきました。 母親をいやる息子の言葉だと信じたかった。けれど、私は気づいてしまったのです。 毎、決まったように、私の座からしずつおが引きされていることに。 健太郎君。あなたの公認会計士としての素らしい才能を、このような醜い内の諍いのために使わせてしまうことを、本当に申し訳なく、けなくっています。 けれど、今の私には、に頼れるが誰もいないのです。

由には荷がすぎます。あの子は優しすぎて、兄にち向かうことはできません。

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