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"義母の葬儀で消えた妻と百八十万" 第7話

お茶を淹れてくれた由が、カップを置いたまま、消え入りそうな声でをいた。 「ねえ、健太郎さん……。お兄ちゃんたち、やっぱり何か変じゃないかしら」 「ああ……。母親を悼む気持ちなどこれっぽっちもなく、遺産のことばかりを気にしているようだった。それに、急に実の鍵を求してきたのも解せないな」 「お母さんの部の鍵……。どうしてあんなに必になって探ろうとしていたのかしら……」 由のそうな瞳を見つめ返しながら、俺の胸の奥でも警鐘が乱打されていた。 正夫婦には、葬儀の裏で何か別の、もっと恐ろしい企みがあるに違いない。の告別式で、彼らの醜悪な本性がさらに剥きしになることは確実だった。 俺はする妻の震えるをそっと包み込み、ので美代子さんの穏やかな笑顔に向かって誓った。何があろうとも、義母の尊厳を守り抜き、由をこの理尽な悪から守り抜いてみせると。

翌朝、告別式の当は、鉛のいが垂れ込める肌寒い朝だった。 俺と由は、式の以に斎へと入った。昨夜の通夜を遥かに回る参列者が訪れることが予されていたからだ。義母はにわたり域の婦会やボランティア活にに携わっており、隣民や古い友たちからく慕われていた。

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俺たちが受付の入れやの配置を最終確認していると、廊の向こうから靴音を響かせて正夫婦が現れた。 昨の今だというのに、直子の装いはさらに常軌を逸していた。首元には幾にも巻かれた粒の本真珠のネックレス、首には同じく真珠とプラチナのブレスレットがじゃらりと音をてている。漆黒のドレスは体にぴったりと沿った級オーダーメイドで、とてもではないが母親をくした喪にす席の装いではなかった。 「おはようございます。今は昨よりずっと勢の方がいらっしゃるんでしょう? お母様も本当に徳のおありになる方でしたからねえ。私たち男夫婦としても、がいというか、誇らしい限りですわ」 直子のその言葉遣いに、俺は猛烈な違と嫌悪を覚えた。「私たちも誇らしい」――まるで、義母のの望や功績が、すべて自分たちの柄であるかのようなかましい物言いだった。

やがて受付が始まり、参列者の列ができ始めると、正夫婦の暴はとどまるところをらなかった。 本来、喪主である由がつべき受付の最線に正が割り込み、々とをげて名刺を配らんばかりの勢いで参列者を迎え始めたのだ。 「本はお忙しい、ご会葬いただき誠にありがとうございます! 故の男の、佐藤正でございます! 母が、皆様方には変お世話になりました! 息子の私から、より御礼申しげます!」

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直子もその隣にピタリと寄り添い、優雅な会釈を振りまいている。 「男の妻の直子でございます。方よりをお運びいただき、恐縮でございますわ」 の振るいは、まるで自分たちがこの葬儀の絶対な主役であり、主催者であると言わんばかりだった。本当の喪主として、夜も眠れずに準備をねてきた由は完全にろへと追いやられ、のように押し黙るしかなかった。 そこへ、義母の実の隣にむ幼馴染の鈴さんが、杖をつきながら受付へとみてきた。 「ゆかちゃん……本当にお疲れ様でしたね。美代子さん、最まであなたに取られて幸せだったわねえ」 鈴さんが涙を浮かべながら由のを取ろうとしたその瞬、直子が横から割り込んで鈴さんのを引に握り直した。 「鈴様、ありがとうございます! ええ、私たち夫婦もね、仕事のを縫って毎のように病院へ通い、最まで全力を尽くして病にあたったのですが……力及ばず、本当に無でなりませんの」 鈴さんは瞬、鳩が豆鉄砲をらったような顔をして直子を見つめた。鈴さんはっているはずなのだ。義母が倒れてからの、実や病院の周りで姿を見かけていたのは、俺と由のだけだったという事実を。それにもかかわらず、直子は恥じるつ見せず、平然と真っ赤な嘘を吐きしてみせた。

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