"断髪の夜に消えた七年目の花嫁" 第6話
「もしもし、ブライダルサロンの予約デスクでしょうか。林と申します。……はい。末に予定しておりました、泉修平様との婚約式および挙式の予約を、すべてキャンセルしてください」
受話器の向こうで、スタッフが慌てたような声をげる。
『かしこまりました。……あの、お相の泉様への確認のご連絡は必でしょうか?』
「結構です。違約は私の個座から全額支払いますので、続きを完させてください」
通話を終えると、織は迷うことなくスマートフォンの源を切り、荷造りのスピードをげた。
をる当の朝、林は奇妙な活気に包まれていた。 リビングの央では、美結が朝からスマートフォンを脚に固定し、玄関のドアが見える角度へと入りに調を繰り返していた。棚のに隠れるように位置を微調し、楽しそうにをっている。
織がスーツケースを引きながらリビングを横切ると、母が美結の背を軽く叩いた。
「美結、何してるのよ。危ないじゃないの」
「だめー、お母さんは触らないで! 今夜ののお祝いに、特のお楽しみを用してるんだから」
「しは控えなさいよ。お姉ちゃん、昨本気でってたじゃないの」
母の言葉に、美結は馬鹿にしたように唇を尖らせた。
「平気平気! お姉ちゃんのりなんて、くてよ。
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あいつは昔からそうなの。子供の頃だって『してやる』って騒ぎしててったくせに、敷の入りでお腹が減って、自分から泣きながら帰ってきたんだから」
聞を読んでいた父も、それに同調してく笑った。
「全くだ。あいつは昔から気がない。今も昔も変わらんよ」
そこへ、玄関から鍵を使って入ってきた修平が、織のスーツケースを見て目を丸くした。
「おい織、どこへくんだよ? そんな荷物持ってさ」
美結がを叩いて囃してた。
「あはは! 修平さんのに引っ越す気満々じゃん! お姉ちゃん、と積極だねー! 本気でってるのかとって損したよ」
修平はしたように相好を崩し、織のスーツケースのハンドルにを伸ばした。
「なんだよ、く言えよな。持ってやるよ」
「自分でやるから、触らないで」
織はたくそのを払い除けた。修平は「はいはい、お嬢様は相変わらずっ張りだな」と肩をすくめ、母は「婚約で気がってるのよ、めに見てやって」と笑っている。
美結が玄関まで追いかけてきて、満面の笑みでを振った。
「お姉ちゃん、夜のには絶対に帰ってきてよね! 特のごちそうを用して待ってるから!」
修平もニヤニヤしながら美結のを突いた。
「おい美結、ほどほどにしとけよ。また泣かせるなよな」
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「えー、泣くから面いんじゃない!」
美結の無邪気な残酷さが、の朝の澄んだ空気に溶けていく。 織は度も振り返ることなく、玄関のドアを静かに閉めた。
かつての織なら、このかられることなど像もできなかった。 理尽に傷つけられるたび、自分を納得させるための言い訳ばかりを探していた。 母は美結をえこひいきしているだけ、本当は私をしているはず。父はいじっぱりで器用なだけ。美結はただの悪ふざけが過ぎるだけ。修平は私の族と仲良くしようと気を遣っているだけ。 周囲のすべてを庇うための言い訳を積みね、自分自のが血を流していることからは、ずっと目を背け続けてきたのだ。
通りにてタクシーを拾うと、運転がバックミラー越しに尋ねてきた。
「どちらまでかれますか?」
「……幹線の阪きに乗ります。速鉄のターミナル駅までお願いします」
が滑りすと同に、織のスマートフォンが震えた。 関支社のプロジェクトチームで、現での受け入れを担当してくれている同僚、藤堂蓮からのメッセージだった。 『オフィスも仮まいのマンションも、準備は完璧にっています。幹線をりたら連絡をください。今夜は歓迎会を兼ねて、美しい夕を用して待っています』
く礼の返信を打った直、今度は族のグループLINEに連続して通が届いた。
母:『帰りに父さんの好物の肉餅を箱買ってきなさい』 美結:『私はカスタードのやつ箱ね! 絶対忘れないでよ!』