みかん小説
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"あの道は、学校へ続いていなかった" 第6話

美紀は即座に答えた。

「ずっとになってから、母から聞いたわ。本の向で、あのの周りを見張ってた男だって」

「見張る……誰を?」

「奥さんよ。佐野澄さん」

美紀は顔をげ、私の目をまっすぐに見つめた。

「あの、精神を病んでるってのでは言われてた。奇声をげたり、へ逃げそうとしたりするから、のにいてもらってるんだって。はみんな、そう納得してた」

「閉じ込めていたのか」

「鍵をかけて、からはられないようにしてたみたい。でもね、貴志くん」

美紀の声が、段くなった。

「本当に狂っていたのは、誰だったとう?」

私は息を呑んだ。

「ある朝ね、私が角を曲がったとき、佐野さんのの玄関脇の窓が、ガタガタって鳴ったの」

美紀の指が、スプーンの柄をく押し込んだ。

「澄さんが、格子窓の隙から腕をしていたわ。骨と皮ばかりの、真っな腕。私に向かって、何か叫んでた。『逃げて』だったか、『助けて』だったか……声が嗄れてて、よく聞き取れなかった」

「美紀ちゃんは、どうしたんだ」

「ちすくんでたら、奥から男のがてきて……澄さんの髪を掴んで、そのまま奥へ引きずり倒したの」

内の静寂が、に痛かった。

「窓がピシャリと閉まって、から鈍い音がした。ドサッ、て。私、怖くて泣きながらに逃げ帰ったわ」

「それで、おばあさんに話したのか」

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「ええ。そしたらね、ばあちゃん、私の頬を引っぱたいたのよ」

美紀の目に、乾いたりのが宿った。

「『滅なことを言うもんじゃない』って。佐野のには関わるな、余計なものを見るな、って。……次のから、私はあのを通るのを禁止された」

美紀はめかけたコーヒーをすすり、喉を鳴らした。

「私だけじゃない。修平くんも、の子も、みんな親から言われて別のへ移された。……それなのに、どうして貴志くんのだけ、あなたを通わせ続けたの?」

「……わからない」

「あなたの、佐野さんのの修繕を請け負ってたでしょう」

美紀の言葉が、私の臓を素で掴むように締めげた。

「仕事やの修理。正雄さん、あそこのの鍵を持っていたはずよ」

午過ぎ、私は町役の民課と、法務局の張所を回った。

の台帳と、公図の写しを請求した。

窓の数料を払い、印刷されたたい更を受け取る。

問題の通は、やはり公図のではではなかった。

佐野の敷の部であり、細い帯状の「空」として登記されていた。

そして、その私の役権設定の類のに、見覚えのある印があった。

『森田務 森田正雄』

父の実印だった。

通の承諾でも、全管理の委託でもない。

昭付で結ばれたその私信には、奇妙な文言が並んでいた。

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『境界フェンスの補修及び通管理の委託に伴い、指定児童の通を認めるものとする』

指定児童。

その類の末尾に、鉛きでさく記されていた。

『森田貴志』

私の名だった。

役の駐にめたので、私はそのを握りしめた。

の端が、指の汗で湿っていく。

私は、偶然を通っていたのではなかった。

契約に基づいて、あの所に送り込まれていたのだ。

私はそのままをらせ、美紀から聞いた「箒の男」のへ向かった。

男の名は角田といった。

佐野の縁で、かつて父の務で元として働いていた男だ。

裾にある平の造宅は、私の実以に荒れ果てていた。

庭には錆びた農具が転がり、野良猫が縁側のから私を威嚇していた。

呼び鈴を鳴らすと、ひどくを置いてから、引き戸がそうにいた。

現れたのは、腰の曲がった、髪混じりの老だった。

酸素吸入器のチューブをに通し、虚ろな目で私を見げている。

「……どなたですかい」

「角田さんですか。森田務の、正雄の息子の貴志です」

老の濁った瞳が、微かに揺れた。

チューブの擦れるシューという械音だけが、玄関に響く。

「……正雄さんの。……坊主か」

「覚えていますか」

「覚えているも何も……」

角田は掠れた声で笑った。

歯のほとんど抜けたから、臭い息が漏れる。

「おが毎朝、黄い傘さして歩いてくるのを、俺はあそこでずっと見てたんだからな」

「角田さん、単刀直入に聞きます」

私は靴脱ぎに歩踏み込んだ。

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