"あの道は、学校へ続いていなかった" 第1話
の油圧音が、すり鉢状のあいにく反響していた。
油の焼ける匂いと、砕かれた古いアスファルトのが、の湿ったに混じって腔をつく。
黄いショベルカーが、雑に覆われた細い盤を無慈に削り取っていた。
私は作業用ロープの側にち、その様子をぼんやりと眺めていた。
森田貴志、歳。
都内のオフィス什器メーカーで営業職として働いている。
このの町をれてから、すでに以が経っていた。
脳梗塞を患った歳の父が暮らしを諦め、県の齢者施設へ入所することが決まった。
今回の帰省は、買いのついた実と周辺のを理するための、数限りの滞だった。
「結構、奥まで削るんですね」
私は持ち無汰に、交通理をしていた現監督らしき男に声をかけた。
男はいヘルメットの鍔を押しげ、私を見た。
「ええ、ここ帯は全部ならして、民の太陽パネルの搬入にする予定なんです。昔の活とはいえ、盤がボロボロですからね」
「そうですよね。……でも、し寂しい気もします」
私は砕の散らばる面を見ろした。
「学の頃、ここを毎通っていたんですよ。奥の旧舎へので」
男は怪訝そうに眉を寄せた。
「通学? ここがですか?」
「ええ。ずっとです。
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角の青いトタン塀を曲がって、細いを抜けると、旧学の裏にられたんです」
男は作業着の胸ポケットから、ラミネート加された古い公図と施図を取りした。
と黒の線が入り組んだ図面を、太い指先でなぞる。
「お客さん、それ、別のと勘違いしてませんか」
「え?」
「ここは昭の終わりからずっと佐野と隣の私ですよ。公ですらない」
男は図面の途で途切れた赤線を指で叩いた。
「昔から、この先はき止まりです。学の敷なんて、度も通ってませんよ」
男の声には、悪もからかいもなかった。
ただ淡々と、元のに記された測量結果を読みげているだけだった。
「そんなはずはないです」
私は乾いた笑みを浮かべた。
「友だちで、毎朝ここを歩いていました。学の裏まで、子どもで分もかからなかったはずです」
男はそれ以、議論を交わす気はないようだった。
「まあ、昔のあぜなんて権者の都で勝に踏み固められたりしますからね。でも図面は、ここは最初からどこにも抜けてません」
男は会釈をして、砂煙の向こうへ歩いていった。
私はそのにち尽くした。
靴底のにある湿ったは、確かに私がに踏みしめていた触と同じだった。
実に戻ると、玄関にはすでに段ボール箱がうずく積まれていた。
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廊の奥から、ガムテープを引き裂くけたたましい音が響いていた。
居では、半にわずかな麻痺を残した父が、畳のに腰をろして古い類を仕分けていた。
「親父、今、の解体現を見てきたよ」
私は靴を脱ぎながら、できるだけ軽い調子で声をかけた。
父はを止めず、背を向けたまま応じた。
「……埃っぽいところをうろつくな。靴の裏を拭いてからがれ」
「昔の通学、壊してたよ。業者のが変なこと言ってた。あのは学に通じてなかったって」
父のが、完全に止まった。
段ボールの蓋を押さえていた指先が、わずかに沈み込んだ。
部のの空気が、ふっとえたようにじられた。
「……お、作業員に何を聞いた」
父は振り向かないまま、く掠れた声で言った。
「聞いたっていうか、雑談だよ。毎あそこを通って登してたって話したら、あそこは私で、昔からき止まりだったって言われたんだ」
沈黙が落ちた。
くで鳴るショベルカーの音だけが、い障子を震わせていた。
やがて、父がぎしぎしと関節を鳴らしながら、ゆっくりと体をこちらへ向けた。
その顔には、老いによる弛みとは別の、奇妙な張りが張り付いていた。
「おは、あそこを毎朝、何頃に通っていた」
脈絡のない質問だった。
「何って……分頃だよ。集団登の集が決まってたから」
父の喉仏が、苦しそうにした。
落ちくぼんだ窩の奥から、乾いた線が私の顔に突き刺さる。