"「部屋はどこでも同じ」と1800万奪った息子の妻" 第7話
息子の鳴り声が響く。 話の向こうで、バサバサと類が乱暴にめくられる音がした。 担当者の声が追い討ちをかける。
『はい。奥様のご指定された所宛に、旬から計回、内容証郵便にて催告を送付しております。いずれも奥様ご自のご署名にて受領されておりますが』
『美ああああっ!』
息子の絶叫とともに、ガタンと凄まじい衝撃音が響いた。 テーブルを殴りつけたのか、あるいは荷物を叩き落としたのか。 周囲のざわめきと、美さんの過呼吸のような泣き声が混ざりう。
『お母さん……違うの……私……』
『何が違うんだよ! 説しろ! 俺のはどうなったんだよ! はどこへやったんだよ!』
話はそこで、プツリと方に切れた。
私は静まり返った畳のワンルームで、スマホを握りしめたままち尽くしていた。 窓のには、変わらないの陽が注いでいる。 驚きはなかった。 ただ、胸の奥底から、鉛のようにくたい確信がいがってくるのをじていた。
やっぱり、そうだったのだ。 美さんは、私のした千百万円を、マンションの残代に充ててなどいなかった。 それどころか、催告が届いていることすら夫に隠し、破滅の瞬まで誤魔化し続けていたのだ。
それから。 夕暮れ、再びスマホが鳴った。
画面には再び息子の名。
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通話ボタンを押すと、今度はの音――激しいの音と、吹きすさぶの音が混じっていた。 どこかの体駐か、非常階段に逃げ込んだのだろう。
「……母さん」
息子の声は、先ほどとは打って変わって、絞りすように震えていた。
「聞いたわよ。変なことになったみたいね」
私がたく告げると、息子は歯をいしばるような音をてた。
「……百万だ」
「何が?」
「美のやつ……母さんの千百万のうち、百万を……自分の弟の亮太に振り込んでやがったんだ……」
血の気が引くのが分かった。 あの夜、ベランダで美さんが囁いていた言葉が、そのまま現実の数字となって突きつけられた。
「亮太の内装会社が、元請けの倒産で焦げ付いて……今すぐがないと渡りをすって、泣きつかれたらしい……。美の母親の子が、美を脅したんだ。『弟を見殺しにする気か』『おが嫁ぎ先から面しろ』って……!」
「それで、私のを売ったを差ししたわけ?」
「美は……ヶで返すって亮太が約束したから、にて替えただけだって言い訳しやがった! 引き渡しまでに戻せばバレないとってたって……! バカだろ! なんでそんな嘘を信じるんだよ!」
息子の罵倒のに、突然、ヒステリックな切り声が割り込んできた。 子さんだった。 現に同席していたのだ。
『ちょっと健さん! なんで美だけを責めるのよ! 弟が破産しそうだったのよ!? 族が助けうのは当たりじゃないの!』
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『当たりなわけあるか! そのせいで居の契約が解除されたんだぞ! 付も母さんのも全部パーだ!』
『何よ、たかが居くらいで! また買い直せばいいじゃない! 健さんだって婿みたいなものでしょ!? 嫁の内のピンチを救ったとえば、男として誇らしいことじゃないの!』
子さんの常軌を逸した号に、私はを疑った。 の全財産を盗んでおいて、男の甲斐性だと?
『ふざけるな!』
息子がこれまでに聞いたこともない声で鳴り返した。
『あれは俺の母さんが! 守ってきたを売って作っただぞ! なんでおの息子の借のために消えなきゃならないんだよ!』
『あんたのお母さんのなら、あんたたちのでしょ!?』
子さんが平然と言い放った。 その言葉は、スピーカー越しにもはっきりと私のに届いた。
『いずれ健さんが相続するじゃないの! 今使おうがで使おうが同じよ! 親のは息子の、息子のは夫婦の! 何が悪いのよ!』
背筋が凍りつくような覚に襲われた。 これが、この親子の本音だったのだ。 最初から、私のおを「自分たちのもの」としかっていなかった。 のが、のすべてを費やして築いた尊厳など、端から微もしていなかったのだ。
『亮太に今すぐ全額返させろ!』
息子が叫ぶ。 だが、話の向こうから聞こえてきたのは、スピーカー通話にされた別の男の――亮太さんの、投げやりで掠れた声だった。