"産後5日の病室で、娘を奪う義母が夫を殴りつけた" 第14話
何より、お子さんの戸籍や健康保険を盾に脅迫をっている。由紀さん、被害届を正式に提されますね?」
「はい」
私の声に、切の迷いはなかった。
「お願いします。娘を守るためなら、何でもします」
その、病のドアが控えめにノックされた。 入ってきたのは、私を担当している弁護士だった。 にはみのあるレターパックが握られている。
「由紀さん、事態がさらにきました」
弁護士はテーブルのにスマートフォンを置き、スピーカーをオンにした。
「昨夜、義母の柄を保護した警察署から連絡が入りました。義母は憔悴しきっており、息子の健太さんから頃受けていた銭求、ならびに今回の300万円の売買計画について、っていることをすべて自供しました」
スピーカーから流れてきたのは、掠れた義母の泣き声だった。
『……健太が言ったんです。“子供を引き渡せば300万になる。それでの利息を払えば、実の差し押さえは免れる”って……。私は、孫を放すなんて嫌だった……でも、を取られたらきていけないと脅されて……』
義母の自録音。 息子を庇うためではなく、自分自がと警察の双方から追い詰められ、保のために差しした肉親の告発だった。
「これで堀は完全に埋まりました」
弁護士が淡に言い放つ。
「養子を希望していたご夫婦からの300万円の振込細と偽造承諾、義母の自供、そしてこの刃物による脅迫状。
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健太さんの為は、もはや言い逃れの余がありません」
壁の掛け計が、午11を指していた。 約束の午3まで、あと4。
「健太さんはおそらく、午3直にこの病院のロビーへ現れます」
弁護士が言った。
「由紀さんが折れて被害届を取りげるか、あるいは直接乗り込んで証を奪い取るつもりでしょう。あの男は今、追い詰められて完全に野狭に陥っています」
私はちがり、窓のを見つめた。 空は抜けるように青く、たいのがを揺らしていた。
「逃げません」
私は振り返り、警察官と弁護士に向かって告げた。
「あのと、この所で完全に終わらせます」
午240分。
面会で賑わう総病院の1階メインロビー。 自ドアがくたびに、たい気が吹き込んできた。 き交う来患者、精算に並ぶ々、処方箋を待つ族連れ。 常の雑踏のに、私はっていた。
腕のには、のいおくるみに包まれた娘をしっかりと抱きかかえている。 私の背には、を着た助産師と、私警官が名、般の付き添いを装って定の距を保っていた。
ロビーの計の針が、250分を指した。
正面のガラスドアが勢いよくき、の男がに入ってきた。
健太だった。 黒いダウンジャケットの襟をて、伸び切った髪を振り乱している。
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目は血り、頬はげっそりと削げ落ち、異様な殺気を放ちながら周囲を見渡していた。
そして、ベンチのにつ私と娘の姿を捉えた瞬、夫の表が歪んだ。
「……由紀」
音を荒てて、健太が突してきた。 そのはポケットのに突っ込まれたまま、何かを握りしめているように張っていた。
「健太さん」
私が静かに呼びかけると、夫は私の目の、わずかメートルの距でち止まった。 から漏れる息が、荒く乱れている。
「取りげたんだろうな?」
周囲を気にしながら、健太は押し殺したい声で囁いた。 その声には、狂気じみた焦燥が張り付いていた。
「活全課への相談だよ。取りげた証を見せろ。それと、退院に受け取った医師の『証』の原本だ。今すぐ俺に渡せ」
「どうして渡さなきゃいけないの?」
私の平坦な問いかけに、健太の眉がねがった。
「は……? ふざけんなよ! がないんだよ! 笠融の連が駅で待ってんだ! 3までにケリがつかなきゃ、俺も母さんも本当に終わりなんだよ!」
健太は歩踏み込み、私の腕から娘をもぎ取ろうとを伸ばしてきた。 爪のに垢が溜まった、汚れた指先。
「渡せ! 俺が役所へって続きする! 赤ん坊を向こうの夫婦に引き渡せば、全部チャラになるんだ! 俺のを邪魔するな!!」
「触らないで」
私は歩も引かず、夫の目を真っ直ぐに見据えた。