"産後5日の病室で、娘を奪う義母が夫を殴りつけた" 第13話
悔しいのでもない。 ただ、自分がかつて信じ、族になろうとしたたちの底なしの醜悪さに、魂が削られるような寒気をじていた。
(でも、私は絶対に折れない)
涙を乱暴にの甲で拭った。 の朝になれば、児科医の診察を経て、退院の保護シェルターへの移が決まる。 もう、この病院にすら居はしない。
そう決して、浅い眠りについたはずだった。
翌朝、午。
柔らかな朝のがカーテンの隙から差し込み、私は目を覚ました。 胸が張り、ズキズキと痛む。 娘をうたびに、体は母親として母乳を作りそうとしていた。 く搾乳して、特定観察の娘に届けてあげなければならない。
私はガウンを羽織り、娘の待つ部へ向かうためにドアの鍵をけた。
ガチャリ。
ドアを側へ押しけた瞬、何かが元にカサリと落ちた。
「……?」
を見ろした私は、息を呑み、全の毛穴が逆つような覚に襲われた。
落ちていたのは、透なさなビニール袋だった。 側のドアノブに、持ちが引っ掛けられていたらしい。
袋のに入っていたのは、私が退院のために用し、あの病に置いてきてしまったはずの——娘のための、淡いピンクのさなシリコン製おしゃぶりだった。
だが、そのおしゃぶりは、無残にもハサミのような鋭利な刃物で、真っつにズタズタに切り裂かれていた。
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「っ……!」
喉の奥で、い鳴が凍りついた。
切り裂かれたゴムの隙に、さくつ折りにされた枚の切れがねじ込まれている。 震える指先でそのを引き抜き、いた。
そこにかれていたのは、殴りきされた、紛れもない夫・健太の跡だった。
『今の午3までに警察の相談を取りげろ。 さもないと、俺が先回りして役所に届をして、度と消せない呪いのような名をつけてやる。 健康保険証の扶養続きも絶対にサインしない。病院代も全額自己負担で払え。 おで娘を育てられるとうなよ。 午3だ。分でも過ぎたら、娘の戸籍をめちゃくちゃにしてやる』
文字の端々から、追い詰められたの濁った悪が滴り落ちていた。
午。 残されたは、あと。
私は切り裂かれたおしゃぶりをのひらので握りしめ、血が滲むほど唇を噛み締めた。
切り裂かれたピンクのシリコン。 指先に触れるたい断面から、夫の底れぬ悪がじわりと皮膚へ染み込んでくるようだった。
『今の午3までに警察の相談を取りげろ』 『娘の戸籍をめちゃくちゃにしてやる』
喉の奥が、氷を詰められたようにえ切っていく。 産6目。 腹部の傷はまだ引きつるように痛む。 だが、私ののを満たしていたのは、恐怖ではなく、かつてないほど透き通った徹なりだった。
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(このは、どこまで落ちれば気が済むのだろう)
けに縋ることも、改に期待することも、もう瞬たりとも許されない。 脅迫文がかれた切れをジッパー付きのビニール袋へ丁寧に納め、私は即座に産ケア棟の内線話を取りげた。
「……相談員さん。警察を呼んでください」
震えを完全に殺した私の声に、受話器の向こうの相談員が息を呑んだ。
「夫が、病棟の私の個まで侵入しました。娘の私物を刃物で損壊し、脅迫状をドアノブに残していきました」
病院側のきは迅速だった。 夜の義母の無断侵入に続き、今度は刃物による器物損壊と脅迫。 防犯カメラの映像を確認した警備主任が、顔を変えて私の部にび込んできた。
「今朝の615分です。フードをく被った男性が非常階段の扉から侵入し、由紀さんの部のドアノブに袋を掛けてちる姿が記録されていました。違いない、ご主です」
午9には、活全課の女性警察官がの私警官を連れて病へ到着した。 テーブルのに並べられたのは、切り裂かれたおしゃぶり、脅迫のメモ、そして病院の入館記録。
「これは単なる親族の揉め事ではありません」
女性警察官は袋をはめたで証拠品を検分し、鋭い差しで私を見据えた。
「建造物侵入、器物損壊、そしてらかな脅迫罪、恐未遂に該当します。