"産後5日の病室で、娘を奪う義母が夫を殴りつけた" 第5話
健太は胸ポケットから、くしゃくしゃになった振込細の束を取りし、義母の元へ投げつけた。 い切れが、パラパラとに散らばる。
「利息だけで毎何万も消えていくんだ! 来週までに300万括で返さなきゃ、実のとを差し押さえるって業者に脅されてたんだよ! だから……こうするしかがなかったんだよ!!」
義母は散らばった細を見つめたまま、へたり込むようにそのに崩れ落ちた。 両で顔を覆い、さく震えている。
私は胸ので娘を抱きしめたまま、ただ呆然とを見つめていた。 胃の底から、たいのような吐き気が競りがってくる。
私がつわりに苦しみ、切迫産のリスクに怯えながら過ごしたあの妊娠期。 健太が「残業だ」「張だ」と言ってに帰らなかった夜。 義母が「男の仕事にをすな」と私を威圧してきたあの々。 その裏で、この母子は、自分たちの見栄と借の穴埋めのために、私のお腹のにいる赤ん坊を値踏みし、取引の具として処理する算段をつけていたのだ。
義母は被害者面をして息子を叩いたが、元を正せば、この怪物の引きを引いたのは義母自だった。 は共犯者だったのだ。 らなかったとはいえ、自らが撒いた欲の種が、自分の孫を売買の贄にするという最悪の形で実を結んだのだ。
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「……狂ってる」
私のから、乾いた声が漏れた。
「あなたたち、全員狂ってる……!」
健太がギロリと私を睨みつけた。 その瞳には、もはや夫としてのも、父親としての理性も残っていなかった。 追い詰められた獣の目だった。
「狂ってて結構だよ! でもな、由紀、もう戻りはできないんだよ!」
健太は内ポケットから、青いファイルを取りした。 そして、震えるでから枚の類を引き抜くと、私の目のに突きつけた。
「これを見ろ!」
太い朝体で印刷された文字が、私の網膜を焼いた。
『養子縁組承諾』 ならびに 『親権者変更および養育委任状』
そこには、私の名がボールペンで几帳面に偽され、そして—— 氏名の横には、鮮やかな朱肉の跡がくっきりと押されていた。
私の、実印だった。
「……何、これ」
「おの実印だよ。おが入院の荷物をまとめてる、ドレッサーの奥の引きしから拝借したんだよ。委任状も承諾も、全部揃ってる。役所への続きは代理を通してめるはずになってるんだ!」
「偽造じゃない……! 犯罪よ! 私はこんなものいてない!」
「証拠があるのかよ!? 実印が押してあって、印鑑証もついてるんだ! おが産鬱でまともな判断ができない、夫である俺が続きを代したって言やあ、役所だって通るんだよ!」
健太は勝ち誇ったように類を振りかざし、見らぬ夫婦の方へ向き直った。
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「さあ、連れてってください! 赤ん坊はそこにいます! 300万は確かに受け取りました、これで契約成だ!」
「ふざけないで!!」
私が叫ぶと同に、それまで黙って事態を注していた、スーツ姿の男性が歩にた。
男性の顔は、氷のようにえ切っていた。 その瞳に宿っていたのは、子供を待ち望む親の温ではなく、決定な違法為をにした徹なりだった。
男性は、健太が差しした類を瞥もしなかった。 代わりに、コートのポケットからスマートフォンを取りすと、迷いのないつきで画面を操作し始めた。
「……健太さん」
く、静かな、しかし病全体を圧する声だった。
「え……?」
「話がまったく違うな」
男性はたい線で健太を射抜いた。
「私たちは、奥様も納得し、正当な法続きに則って子供を託されると聞いていたからこそ、支援としての名目で300万円を支払った。だが、実態はどうだ。母親本は何もらされず、類は偽造、しかもあなた方の個な借返済のために子供を利用した……」
男性の指が、通話アプリのキーパッドを叩く。 画面に浮かびがった数字は、3桁。
『1』『1』『0』
「奥様が同していない以、これは養子縁組などではない」
男性は画面を健太の目のに突きつけた。
「派な未成者略取、ならびに売買を伴う詐欺だ。——今すぐ、警察を呼ぶ」
発信ボタンのに、男性の親指が置かれた。
「や、やめろ……! 待て、待ってくれ!!」