"台所へ追いやられた娘婿が、大晦日に義母を連れ去った夜" 第7話
を失う恐怖で私が震えがると本気で信じている。
「理恵。会社を継ぎたいと言ったのは、あなたね」
『え……?』
「専務と緒に、をげて回りなさい。正規の仕入れ値を払い、相の条件を全部呑んで、現で買い付けなさい。それが、私の背に隠れずに商売をするということよ」
それだけを告げて、私は通話を切った。 源ごと、落とした。
部に、再び柔らかな陽が満ちていく。 胃の奥がキリキリと痛む覚は、議となかった。 ただ、自分が蒔いたわけではない種が、あるべき所で芽を吹き、刈り取られているだけだという、奇妙なまでの静けさがあった。
昼過ぎ。 玄関のインターホンが、無慮に連打された。
ピンポン、ピンポン、ピンポン。 静かな廊に、苛ちに満ちた属音が響き渡る。
のぞき穴を見るまでもなかった。 ドアをけると、そこには毛皮のコートを羽織った女の美子が、級百貨の袋を両に提げてっていた。
「……こんなボロアパートにいたの」
美子は番、眉をひそめてを鳴らした。 階段の隅のクモの巣や、古びた郵便受けを、汚いものを見るような目で瞥する。
「がっていいわよ。お茶くらいならせるわ」
私が言うと、美子は「ここでいいわ」と吐き捨てるように言い、がりかまちに袋を置いた。 からてきたのは、桐箱に入った特の静岡クラウンメロンと、老舗ジュエラーの黒いリボンがかかった箱だった。
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「お父さんから言われて持ってきたんじゃないからね。私の気持ち」
美子は腕を組み、いコートの裾を払った。
「お母さん、もういい加減にしなさいよ。晦にをびして、娘婿を連れして……親戚じゅうにどんな顔して説しろって言うの? 世体ってものがあるでしょう」
「世体」
その言葉が、の奥でたく転がった。
「ええそうよ。うちの夫の系列ホテル、今朝から板が騒ぎなのよ。お父さんの会社のせいで材がショートして、客にす懐の献を急遽変更する羽目になったんだから。夫の実から『おの実はどうなっているんだ』って、私がどれだけ嫌を言われたか分かる?」
美子は歩踏み込み、黒いジュエリーボックスを私の胸元に押し付けてきた。
「これ、ずっと欲しがってた真珠のネックレスでしょ。お父さんも反省してるわよ。昨のことは酒のの冗談だった、悪かったって言ってる。だから、これを受け取って、今すぐタクシーで戻って。お母さんが話本入れれば、田も焼津もくんでしょ?」
私は、差しされた黒い箱を見つめた。 の留め具。 吸い込まれるような沢。
、結婚したばかりの頃、私がふとショーウィンドウを眺めて「綺麗ね」と呟いたのを、美子はどこかで覚えていたのだろう。 だが、今の私にとって、それはただのたいの塊にすぎなかった。
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「美子」
「何よ」
「あなたの夫の会社、うちのお父さんの会社に、資の話を持ちかけているそうね」
美子の表が、ほんの瞬、引きつった。
「……な、何の話よ、急に」
「昨、勝をる、座敷の話の横に置いてあった企画を見たわ。産の物流倉庫と配送網を、あなたの夫の会社が設する弁会社に現物資させる計画。実質な、会社の吸収分割ね」
美子の目が泳ぎ始めた。 線を逸らし、バッグの持ちをぎゅっと握り直す。
「……お父さんも歳だし、会社がちかなくなるに、うちのが助けてあげようとしてるんじゃない。何が悪いのよ」
「お父さんは、その話をっているの?」
「これから話す予定だったのよ! でも、お母さんがこんな騒ぎを起こしたせいで、全部めちゃくちゃよ! お父さんが違約で首が回らなくなったら、うちのが買い叩く形になっちゃうじゃない!」
美子のから、本音が転がりた。
助けるためではない。 り目に祟り目で、父親が築いた配送網と老舗の利権を、自分の夫の会社にくみ込ませるための算段。 夫が番がり、自にしていた女の正体が、これだった。
私は、元に置かれた桐箱のメロンと、黒い宝箱を、両で静かに美子の元へ押し戻した。
「持って帰りなさい」
「……は? 受け取らない気?」