"台所へ追いやられた娘婿が、大晦日に義母を連れ去った夜" 第4話
確かに妻は、の初め、分いファイルを差ししてきた。 「私は今で退きます。注先との契約と、現の連絡先リストです。けの繁忙期に穴が空かないよう、代わりのを決めてください」 そう言って々とをげた妻の顔を、夫は「調子に乗るな」と蹴したのだ。 自分の稼ぎでわせてやっている女が、勝に仕事を辞められるはずがないとを括っていた。 どうせ辞める辞める詐欺で、嫌を取ってほしいだけだと決めつけていた。
だが、妻は本気だった。 契約通りに、淡々と、法に点の隙もなく、自らの役目を終わらせていたのだ。
髪を入れず、転がった携帯話が再び激しく震え始めた。 今度は女の夫の取引先からだった。 続いて、会社の固定話が、廊の向こうでけたたましい鳴のような音をてて鳴り響く。
元旦の静岡のは閉まっている。 今夜、の配した独自のルートが止まれば、届くはずの何百キロもの級材が、ただのとなって消える。 違約。取引止。信用失墜。 かけて築きげた「ブランド」が、たった晩で瓦解する音が、すぐそこまで迫っていた。
「……健司だ」
夫が掠れた声を絞りした。
「健司の携帯にかけろ! くしろ! あいつのにあのババアが乗ってるんだ!!」
のダッシュボードので、健司さんのスマートフォンが青いを放ちながら震えていた。
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画面には「社」の文字。
健司さんはを向いたまま、線すらかさない。
「なくていいの?」
私が尋ねると、健司さんはさく息を吐いた。
「母さん、スピーカーにしますか」
「……そうね。度だけ、聞いてみましょう」
健司さんがステアリングの通話ボタンを押した。 内に、をつんざくような夫の絶叫が響き渡った。
『健司!! てめえ、今どこをってやがる!!』
りと恐怖が混ざりい、声が完全に裏返っている。
「国号線です。何か用ですか、社」
健司さんの声は、信じられないほど徹だった。
『用どころじゃねえ! すぐにをUターンさせろ! 母さんをせ! ! おい、聞こえてるんだろ!!』
私は静かにをいた。
「ええ、聞こえていますよ」
『! お、田の仲買に何を吹き込んだんだ!? 特選便の荷が保留になってるってどういうことだ! の朝までに伊豆へ届けなきゃならん魚だぞ! く配の解除の話を入れろ!』
どこまでも、自分の都。 どこまでも、会社のメンツ。 連れ添った妻が夜にをた理由など、このののにはミリもしていない。 ただ、届くはずの魚のことだけ。
「解除も何も、私の事務所は本で業務を終いたしました。契約通りです」
『契約だの何だの屁理屈を抜かすな! 誰のでこれまで飯をってきたとってんだ! 夫婦だろ! 族の会社だろうが!!』
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「ええ、ですからヶから申しげておりました。しい担当者へ引き継いでくださいと」
『そんな昔の話をしてるか! 今すぐ戻れ! 戻って話本入れりゃ済む話だろ! おい、どこにいるんだ!』
話の向こうから、荒い息遣いとのドアがバタンと閉まる音が聞こえた。 まさか、自分でをして追ってきているのか。
「健司さん、コンビニの駐に入って」
私が言うと、健司さんは無言でウィンカーをし、沿いの型コンビニの駐へとを滑り込ませた。 夜の半。 型トラックが何台もエンジンをかけたまままっている、吹き曝しの駐。
をめてから分も経たないうちに、タイヤを軋ませながら台の級国産セダンが突っ込んできた。 夫のだった。
髪を振り乱し、着すら羽織っていない夫が、千鳥のまま運転席からびしてきた。 真の気の、のシャツ枚で、鬼のような形相をしてこちらのへ駆け寄ってくる。
「!! りろ! くりんか!!」
夫が助席のドアノブを乱暴に引っ張る。 健司さんが事にドアロックをかけていたため、ガタガタと無質な音が鳴るだけだった。
私は窓のスイッチを押し、ガラスを数センチだけげた。 たい隙とともに、酒と脂の混ざった夫の激しい息遣いが流れ込んでくる。
「何ですか」