"身代わり花嫁と一千万円の通帳" 第27話
誠治さんは私の隣に歩み寄ると、勢の入所者や職員が見守るで、私の肩にそっとを置き、静かに、けれど全員に聞こえる澄んだ声で告げた。
「トメさんの言う通りだよ、遥さん。……君は誰かの代わりなんかじゃない。俺は、遥さんが来てくれて、本当に嬉しかったんだから」
その以来、私の居所は、野の瀬のので確固たるものとなっていった。
週に、私はお茶のになるとトメさんから託された茶筒を抱えて施設へ通い、入所者ひとりのの状態や体調にわせたお茶を淹れて回った。
トメさんは毎、私の淹れたお茶をみ干すと、「今はし渋いね」「今のお茶は来だ」と、厳しくも温かい点数をつけてくれた。その点数を聞くことが、私のきがいになっていた。
施設での活を通じて、私はこのの町にきる々の温もりと、誠治さんが背負ってきた荷の真実を、さらにくることとなった。
の梅の午、商の森田米穀へ施設で消費する米の納品伝票を届けにったのことだ。
の奥の帳にいた源蔵さんは、私を見つけるなり満面の笑みで招きし、仏壇のある奥の座敷へとげてくれた。仏壇の央には、髪の穏やかな女性の遺が飾られていた。
「うちのばあさんの、よし子だ。……にな、野の瀬ので、倉田君やみんなに見守られて息を引き取ったんだよ」
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源蔵さんはいお茶を啜りながら、静かに語ってくれた。
病院の無質な集治療ではなく、まれ育ったこの町で、畳ので最期を迎えたいという妻の願いを叶えてくれたのが、誠治さんだったという。
「それだけじゃない。この商はな、にはスーパーに客を奪われて、半分以のがシャッターをろして潰れかけていたんだ。そこへ倉田君がやってきてな、『施設の米も野菜も肉も、全部この商のから買います。値段がくても、元のを守ることが、この町の福祉を守ることですから』と言ってくれたんだよ。……うちの米も、百の百も、倉田君のおかげで今までを畳まずに済んだんだ。わしが泣いて礼を言ったら、あいつは何て言ったとう?」
源蔵さんは目尻の涙を指で拭い、誠治さんの調を真似て見せた。
「『俺が稼いでいるんじゃない。町のみんなに、俺がかされているんです』ってな……。遥ちゃん、倉田君の正体を黙ったまま見いをさせて、本当にすまなかったな。あいつから『肩き目当てではなく、俺というを見てくれると会いたいから、絶対に言わないでくれ』と固く止めされていたんだよ」
誠治さんの徹底した現主義と、町への無私の献。その真実をるたびに、私の胸は誇らしさとおしさでいっぱいになった。
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のある朝、施設の裏の駐で、若い介護士の川翔太さんが、作業着のポケットから半分覗かせたい封筒を見つめながら、面にしゃがみ込んでを抱えているのを見かけた。
封筒の表には、『退職届』の文字が震える跡でかれていた。
川さんは、隣県に暮らす母親が病を患い、仕送りのために夜勤を無理してく引き受けていたのだという。の現で、自分が倒れるわけにはいかないと眠を削り、限界を迎えていた。
「……このままだと、お寄りに対して優しく接することができなくなりそうで……それが、たまらなく怖いんです」
涙をこぼす川さんの姿に、私はかつて祖母の介護でともにすり減らし、誰にも助けを求められずに孤していた過の自分をねわせていた。
「川さん。その封筒をすに……度だけでいいから、誠治さんに相談してみてくれませんか?」
私の言葉に、川さんは迷いながらも、そのの午に誠治さんときりで面談をった。
その結果は、劇なものだった。
翌週から、野の瀬のの夜勤体制にすぐさまメスが入れられ、夜の仮眠に必ず別の待職員が巡回を交代するシフト表が導入され、全職員が確実に仮眠を取れる仕組みがえられた。さらに、夜勤当の増額と、介護福祉士の資格取得に向けた学費支援制度が設された。