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"身代わり花嫁と一千万円の通帳" 第7話

の肌寒いが庭の犀を揺らす、居の固定話がけたたましく鳴り響いた。受話器を取ったのは母の佳代だった。相は、母の母方の従兄弟にあたる森田源蔵さんだった。

源蔵さんは、母の故郷である野の瀬町というの町で、代々続くきな米穀を営んでいる初老の男性だった。昔気質の頑固でにいで、町の商の振興会もく務めており、母の実とは法事や冠婚葬祭の折に義理の付きいをする程度のい親戚だった。

分ほどの通話を終えて受話器を置いた母は、かつて見たことがないほど声を弾ませ、頬を気させて居へと戻ってきた。ソファーでテレビのファッション番組を眺めていた姉と、聞を広げていた父のにち、両をパンと打ち鳴らした。

「也、変よ! あなたに素らしい縁談がい込んできたわ! あの野の瀬町の源蔵叔父さんがね、ぜひ也にと、直々に釣を持ってこられたのよ!」

源蔵さんの話によれば、今の、母の実の先祖の法が野の瀬町の菩提寺で営まれた際、京から派ななりで参列していた姉の姿を偶然見かけ、く印象に残っていたのだという。姉は法の途で「急な仕事の打ちわせが入ったから」と親戚への挨拶もそこそこにタクシーで帰ってしまったのだが、源蔵さんの目にはその華やかさが際って映ったらしかった。

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母は興奮めやらぬつきで、話でメモした裏を鏡越しに読みげた。

「お相はね、倉田誠治さんという方よ。今で歳。野の瀬町のごでね、とにかく真面目で実直、町のたちからの信頼も絶で、望がい素らしい男性なんですって! ……ええと、お仕事は……あ、そうそう、介護のお仕事をされているそうよ。町にあるきな福祉施設にお勤めでね……」

その瞬、ソファーにく沈み込んでいた姉の顔が、氷を浴びせられたかのようにあからさまに引きつり、眉が吊りがった。

「……はあ? 介護士?」

「え、ええ……ずっと同じ施設で、にく勤めげているそうよ」

姉は元のネイルオイルの瓶をガラステーブルのにカツンと乱暴に置くと、底汚らわしいものを見るような目を母に向けた。

「冗談でしょ!? 田舎の老ホームで、寄りのの世話なんかしてる男なんて、絶対に無理! ありえない!」

姉は胸ので腕を組み、い脚を組み替えて吐き捨てるように続けた。

「介護士なんて、絵に描いたようなじゃないの! そんな男と結婚して、体どんな惨めな活を送れっていうのよ? それに何よ、その野の瀬町って! コンビニにくのすらで何分もらなきゃいけないようなド田舎の奥でしょ!? 私がそんなところでカビのえたような田舎暮らしに耐えられるわけないじゃない! お母さん、今すぐ断ってよ!」

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「そ、そうよねえ……」

母は先ほどまでの興奮を瞬で萎ませ、困惑したように眉をの字に曲げた。

「確かに、也の美貌とこれまでのキャリアを考えたら、田舎の介護士さんじゃあ、あまりにも釣りわないわよね……。でも、源蔵叔父さんの顔を潰すわけにもいかないし……角をてずにどうやってお断りしたものかしら……」

がを抱えて唸っていた、まさにそのだった。

台所の流しで、夕のぷら鍋の油汚れを洗剤の泡で落としていた私の背に向かって、姉の酷で鋭い声が投げかけられた。

「……ねえ、遥でいいじゃない。遥をかせればいいのよ」

私のが、ピタリと止まった。

スポンジからい泡がポタリとステンレスのシンクに落ち、蛇から流れ続けるの音だけが、やけに鼓膜の奥で反響した。

母は瞬、虚を突かれたように目を丸くしたが、次の瞬には「そのがあったわね!」とばかりに、パチンとを打ち鳴らした。

「そうね! 源蔵叔父さんには、『姉の也は京での仕事が忙しくてがせないので、代わりに妹の遥ではいかがでしょうか』って聞いてみるわ! 同じ望の娘なんだから、問題ないはずよ!」

「お、お母さん……? 私、そんな……」

私が濡れたをエプロンで拭きながら恐る恐る振り返ると、母はすでに話の受話器をに取り、無を言わせぬい調で私を制した。

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