"鍵をかけた部屋で、誰かがシャワーを浴びている" 第16話
「わかりました。その荷物は絶対に受け取らないでください。再配達の続きもしてはいけません。々のほうから配送業者に連絡を入れ、荷物の保管を請し、差し押さえの続きを取ります。梨さん、今夜は自宅にいられますか」 「……はい。でも、怖くて……」 「今からこちらの捜査員を練馬に向かわせます。宮澤の柄を確保するための緊急配備を敷きます。鍵をしっかり締めて、誰が来てもドアをけないでください。警察官が到着したら、インターホン越しに警察帳と所属、氏名を名乗らせてください」
通話が切れた。 部のに、再びたい沈黙が戻ってきた。
私は気をすべてつけた。 リビング、キッチン、廊、トイレ。 だが、浴の照だけはどうしてもつけることができなかった。 あの乳の折れ戸を見るだけで、滴の落ちる音と、あの女の穏やかな声が蘇ってくる。
――今はどうしてこんなにく起きちゃったの?
私はリビングのクローゼットから番のブランケットを引きずりし、ソファのにさく丸まった。 スマートフォンを胸に抱きしめ、秒針の音に怯えながら、捜査員が来るのを待った。
、インターホンが鳴った。 モニターには、スーツ姿の男女の姿が映っていた。教えられた通りの分証の提示を確認し、チェーンをかけたままドアを細くける。
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は川署と練馬署の刑事だった。
部に入ってきたは、まず連絡票を透な証拠品用のビニール袋に収めた。 それから、鑑識の腕章を巻いた別の係官が流し、洗面所へと入っていった。
「しの、失礼します」
彼らは靴に青いビニールカバーをかけ、袋をして、洗面台の周囲に特殊なライトを当て始めた。 ルミノール反応の試薬が吹き付けられる。 リビングの引き戸の隙からその景を見ていた私は、わず息を呑んだ。
洗面台のボウルの縁、そして浴のの目皿の周囲が、暗のでぼんやりと青く発した。
「……微量ですが、血液の潜血反応がますね」 鑑識の捜査員が声で呟いた。 「入りにハイターか何かで擦られた跡があります。排管の奥からも、わずかに採取できそうです」
吐き気がこみげた。 私は両でを塞ぎ、目を逸らした。
私のらないところで。 私が仕事にかけ、あるいはベッドで疲れを癒していたその元で、本当にの血が流されていたのだ。 私のの排管を通り、へと流れていったのだ。
実況見分が終わったのは、夜を回った頃だった。 女性刑事が私に温かいお茶のペットボトルを差ししてくれた。
「宮澤由佳は、先ほど川内のネットカフェからてきたところを、捜査員が職務質問し、任同を求めました。
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先ほど川署に入り、傷害事件の証拠隠滅容疑で事聴取を始しています」
その言葉を聞いても、堵は湧いてこなかった。 胸の奥に澱のように溜まっているのは、たい汚濁だけだった。
「、午に川警察署へ来ていただけますか。被害者の方の供述調の確認と、梨さんの正式な参考調の作成をいます。いになるといますが……ご協力をお願いできますか」
「……わかりました」
私はさく頷いた。 その夜はもできなかった。部のかりをすべてつけたままでも、は壁の隙からじわじわと染みしてくるようだった。
翌朝、私は始発にいに乗り、埼玉の川へと向かった。
京浜線の窓から見える景は、どこまでも平坦で、無質だった。 荒川を越えて埼玉県に入るとき、私は自分がなぜこんな所に向かっているのか、まるで実が湧かなかった。ただ真面目に働き、自分の部で静かに暮らしていただけの代の女が、なぜ警察署の取調に通われなければならないのか。
川警察署は、駅から分ほど歩いた幹線沿いにあった。 なコンクリートの建物のにはパトカーが何台もまり、入りする々の表は様に険しかった。
受付で名を告げると、昨話で話した佐伯刑事が迎えにてきた。
「朝くからすみません、梨さん。