"鍵をかけた部屋で、誰かがシャワーを浴びている" 第7話
「先週の曜の朝、あなたが私の部の鍵をけてていくのを見たって。由佳、あなた、私の部に何回入ったの?」
由佳の肩が微かにねた。 彼女は両を膝のでぎゅっと握りしめ、爪をい込ませていた。
「答えて」
「……回」 消え入りそうな声だった。
「回?」
「ううん……回、かな」
ので何かが音をてて千切れた。 「回? 何のために? どうやって鍵をに入れたのよ! の鍵は返したって言ったじゃない!」
私の声に、由佳はビクッと体を震わせ、唐突にボロボロと粒の涙をこぼし始めた。 そして、に両をつき、額をカーペットに擦り付けるようにして平伏した。
「ごめんなさい……! ごめんなさい紗織、本当にごめんなさい……!」
激しい嗚咽が静かな部に響き渡る。 歳のが、座をして泣きじゃくっている。その異様な景に、私のりは瞬だけきを失い、たい困惑へとすり替わった。
「泣かないで説して。どうして私のに入ったの。何をしていたの」
由佳は額をにつけたまま、途切れ途切れに言葉を吐きした。
「の……紗織が入院したとき……鍵を返したでしょ? あの、私……くのホームセンターで、スペアを本、作っちゃったの……」
背筋にたいが流れた。 。私が急性虫垂炎で週入院したとき、郵便物の受け取りと部の換気を頼んだ。
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彼女はその親切の裏で、私の鍵を勝に複製していたのだ。
「なんで……そんなことしたの」
「あの頃、私……実とトラブルになって、おが本当になくて……アパートの賃もヶ滞納してて……いつ追いされるか分からなかったの。紗織の部は広くて、綺麗で……もし本当にむ所がなくなったら、お願いして転がり込もうとってた。でも、紗織に迷惑かけたくなくて、言いせなくて……お守りみたいに、鍵を持ってるだけでだったの」
由佳は顔をげた。涙とマスカラでぐしゃぐしゃになった顔で、すがるように私を見る。
「先、本当にアパートを追いされちゃって……漫画喫茶を転々としてたの。でも、シャワーも満に浴びられなくて、コインランドリーを使うおも惜しくて……紗織が張でいない、いしちゃったの。留守だって、にLINEで聞いてたから……回だけ、お呂を借りようって。本当に、それだけだったの」
「……それだけ?」 私はややかに問い詰めた。「じゃあ、あの夜は何? 張から帰ったあとの、あの夜は!」
由佳は再び肩をすくめ、激しく首を振った。
「あれは……違うの! 紗織がく帰ってくるなんてらなくて……! 張は曜までだって言ってたじゃない! だから曜の夜に入って、朝まで仮眠させてもらおうとって……そしたら、紗織が寝にいて……」
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「私がいるのに、入ってきたの!?」
「逃げようとった! でも、玄関の鍵をける音で紗織が起きちゃうかもしれないとって……息を潜めて、紗織がく眠るのを待ってたの。そしたら、汗もかいてるし、どうしても気持ち悪くて……紗織はいつも栓をして寝るから、シャワーの音くらいなら絶対に起きないとって……」
由佳はしゃくりげながら、何度もをわせた。 「本当にごめんなさい! 盗みなんてしてない! 紗織の物を盗むつもりなんて絶対に、絶対にこれっぽっちもなかったの! ただ、惨めで……誰にも頼れなくて……本当に、がおかしくなってたの……!」
その告を聞きながら、私は激しい脱力に襲われていた。
親友の転落。貧困。賃滞納。 そして、プライドのせいで助けを求められず、留守の友の部に忍び込んでシャワーを浴びるという、れで、あまりにも勝な奇。
辻褄はっていた。 盗まれたものがない理由も、あの夜の「今はどうしてこんなにく起きちゃったの?」という言葉も。彼女にとって、私は「いつも栓をして朝まで決して起きない同居」のような覚になっていたのだ。
恐怖は、急速に汚れた失望へと変わっていった。 、お互いに自したの女性として支えってきたとっていた関係が、こんなにもグロテスクな形で崩壊するとはわなかった。
「……鍵をして」 私はく言った。
由佳は震えるでバッグを探り、本の鍵をテーブルのに置いた。