"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第11話
私は居てもってもいられず、以彩の子のメンテナンスでお世話になっていた、福祉用具業者の担当者に連絡を入れた。 昔からの顔見りで、域の福祉事にるいだった。
そこで聞かされた話に、私はを疑った。
元夫は、退院した義母をすぐに入れる特別養護老ホーム(特養)を探し回ったらしい。 だが、介護2では原則として特養の入所基準(介護3以)を満たさず、民の介護付き料老ホームは入居だけで数百万円、額も万円以かかる。 持ちのがない元夫に、そんな選択肢はなかった。
そこで、あの男がいついたのが――。
『彩のステップハウス計画』への寄だった。
彩が入居する予定の自活訓練は、駅にある区営のバリアフリー宅のだ。 エレベーターがあり、敷内にはスロープが完備され、はヘルパーが定期に巡回してくる。
元夫は、産業者や支援センターの窓で、こう触れ回っていたという。
「娘が暮らしの訓練をするなら、ちょうどいい。すぐ隣の部か、同じマンションの空き部に俺のお袋を引っ越させればいいんだ。は娘のヘルパーのついでに様子を見てもらえるし、朝晩は娘がお袋の否確認やちょっとした世話をすれば、娘にとっても自のための『活リハビリ』になる。
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鳥じゃないか」
の芯が、りで沸騰しそうになった。
活リハビリ? 鳥?
肢が麻痺し、自分の体を子に移乗させるだけで精杯の娘に、介護の義母の世話を押し付ける気なのか? 私が逃げしたの介護の穴を、自分の娘を犠牲にして埋めようとしている。 しかもそれを、「娘の自を支援する優しい父親」の顔をしてめようとしているのだ。
反吐がる。 自分のを汚さず、誰かのをすり潰して自分の体面を守ることしか考えない。 、私にしてきたことと、まったく同じことを、今度は自分の血を分けた娘に仕掛けようとしている。
止めなければならない。 彩はっているのだろうか。 あの男の浅ましい企みに、気づいているのだろうか。
スマホを握りしめ、彩の番号を呼びそうとした。 けれど、画面に触れる寸で、指が止まった。
『お母さんの「作品」でいるのは、もう終わり』
あのの、彩のえ切った瞳が脳裏をよぎる。 今さら私がしゃしゃりて、何を言えるというのか。 「お父さんはあなたを利用しようとしている」と警告したところで、「また私の邪魔をする気?」とね除けられるだけではないのか。
私はスマホを握りしめたまま、暗い部でち尽くすしかなかった。
そして迎えた、曜の朝。 彩が自活訓練へ入居する、期試の初だった。
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は、夜からのたいがり続いていた。 アスファルトが黒く濡れ、吐く息がい。
私は、約束を破っていた。 もう関わらない、あの子のにを挟まない。そうに誓ったはずなのに。
気がつけば、私は宮本のの、軒隣の柱のにっていた。 傘をく差し、フードを目に被って、息を潜めていた。 姿を見せる気はなかった。 ただ、あの子が無事に福祉両に乗り込み、しい歩を踏みすところを、くから見届けたかった。それだけだった。
午。 予定では、半に区役所が配した福祉移送サービスが迎えに来ることになっている。
だが、宮本の玄関の引き戸が、突然、乱暴な音をてていた。
からびしてきたのは、ゴルフウェアのにウインドブレーカーを羽織った元夫だった。 には、級そうなゴルフバッグを抱えている。
「……え?」
わず声が漏れそうになった。 なぜ、ゴルフバッグ? 今、娘の事な試の初なのに?
元夫は庫のワンボックスカーのトランクにゴルフバッグを乱暴に積み込むと、苛った様子で玄関へ戻り、へ向かって鳴り声をげた。
「おい彩! いつまでグズグズしてんだ! くしろ!」
玄関のから、彩のく、張り詰めた声が返ってきた。
「お父さん、迎えのは半に来るって、昨も言ったでしょ」
「そんなもん、今すぐキャンセルしろって言ってんだろ!」