"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第8話
そして、彩は。
ゆっくりと、顔をげた。 その瞳には、涙の滴もなかった。 あるのは、底れない、え切った軽蔑のだけだった。
「……私のために、言ってるんだ」
彩が、ポツリと呟いた。
「そうよ。あなたの体が配だから……」
「お母さん」
彩は私の言葉を、氷のような声で切り裂いた。
「私の部の、机の番の引きし。鍵がかかってたよね」
脈絡のない言葉に、私は眉をひそめた。
「え……? 何のこと?」
「昨、芽ちゃんに伝ってもらって、部の荷物を理したの。そしたらね、てきたのよ。お母さんが事に隠してた、あの鍵が」
臓が、ドクンとねがった。
嘘でしょう。 あの引きしは、私が……。
彩は膝のに置いていた黒いリュックサックのファスナーを、静かにけた。 ジッパーの滑る音が、静寂を切り刻む。
引きされたのは、通の、ひどく褪せた茶い角形号の封筒だった。 端が擦り切れ、何度も握りつぶされたようなシワが無数に入っている。
封筒の表には、赤いスタンプで、はっきりと印字されていた。
『・障害者自活支援事業に関するおらせ』
付は、。
「……あ」
喉の奥から、乾いた音が漏れた。 血の気が、の先から気に引いていくのが分かった。
「覚えてるよね、お母さん」
彩は封筒から、枚の公な通を取りし、テーブルの央へ滑らせた。
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坂井さんと女性職員が、息を呑んでその用を覗き込む。
そこには、の付と、区役所福祉課の公印、そして徹な表題が記されていた。
『自活体験事業 利用申請取げ通』
「、私は区の体験事業に格してた」
彩の声が、静かに、しかし刃物のように部に響き渡った。
「類選考も通って、面接もクリアして、あとは体験入居の程を決めるだけだった。なのに……ある突然、区役所から『格の通』が届いた。定員オーバーでダメだったって、お母さんは私にそう言って、泣きながら私の背を抱きしめたよね。『残だったね、でも彩にはまだかったのよ、ずっとお母さんがそばにいるからね』って」
「彩、それは……」
「嘘だったんだね」
彩の指先が、テーブルののをく叩いた。
「格になったんじゃない。お母さんが、私のらないところで区役所にって、取りげをしたんだ。『娘の体調が急変し、精神にも定で暮らしに耐えられない。母親である私の判断で辞退します』って……私の印鑑を勝に持ちして、申請を取りげた」
坂井さんが、驚愕の表で私を見つめた。 支援センターの職員も、言葉を失って元を押さえている。
「違……違うの、彩! あのは、あなたが本当に邪をこじらせてをして……! 体も落ちていたし、そんな状態ででアパートになんてったら、本当に命に関わるとったのよ! あなたを守るためだったの!」
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「守るため?」
彩が、初めて声を荒らげた。 子の肘掛けを激しく叩き、半を乗りして私を睨みつけた。 その瞳から、粒の涙がボロボロと溢れしてきた。 けれど、それはしみの涙ではない。、腹の底に溜め込んできた、猛毒のようなりの涙だった。
「私の体を配したんじゃない! お母さんは、私が自分のでにてくのが怖かっただけでしょ!」
「そんなこと……!」
「私がで暮らせるようになったら、お母さんの役目が終わっちゃうから! この獄みたいなで、お父さんからもおばあちゃんからも政婦扱いされて、それでも『私には障害のある娘を支える派な母親っていうきがいがある』ってい込みたかっただけでしょ!」
空気が、凍りついた。
言句が、私の臓を正確に抉り抜いていく。 呼吸ができない。 喉が締め付けられ、胸が痛い。
違う。 そんなはずはない。 私は、ただ娘がで、憫で、傷ついてほしくなくて……。
本当に? 本当に、そうだったのか?
、格の通がポストに届いたの夕暮れ。 台所の暗がりので、その通を見つめながら、私の胸を来したあのドス黒いは何だった?
『この子がいなくなったら、私はこので、ただの介護と召使いになってしまう』
そんな恐怖が、私のの底に、ミリもなかったと……神に誓って言えるのか?