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"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第7話

てきたのは、ヨレヨレのスウェットを着た夫だった。 目のには濃い隈が張り付き、無精髭が伸び放題になっている。

「……入れよ。通りに来やがって」

夫は忌々しそうに吐き捨て、奥へと引っ込んだ。

玄関を跨いだ瞬、異様な悪臭がを突いた。 換気されていない部の淀んだ空気。 饐えたようなゴミの匂いと、排泄物の微かな臭気。 靴箱のには、宅配ピザの空き箱とコンビニ弁当の容器が積みにされていた。

たった週で、私が磨きげていたは、ゴミ敷のように荒れ果てていた。

リビングへ入ると、異様な景が広がっていた。 ダイニングテーブルのには、みかけのペットボトルや散乱した薬のシート。 向かい側には、ケースワーカーの坂井さんと、域包括支援センターの女性職員が、困惑した表で座っていた。

そして、部の隅の子には、彩。 その隣には、見らぬ若い女性……ショートカットの活そうな女性が寄り添うように座っていた。 胸元にさなリュックを抱えている。林芽さんだ。

「宮本さん、お忙しいありがとうございます」

坂井さんがちがり、会釈した。 私はさくをげ、テーブルの端のパイプ子に腰をろした。

奥のからは、ドンドンと壁を叩く鈍い音が響いている。 義母が寝たきりで暴れているのだ。

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「おい真理子! あんたそこにいるんでしょ! お茶! くいお茶を持ってきなさいよ!」

義母の嗄れた鳴り声が襖越しに聞こえてくる。 夫は舌打ちをし、「うるせえな、今事な話をしてるんだよ!」と鳴り返した。 獄のような空気配だった。

「では、彩さんの自活訓練への入居に向けた、第1回事アセスメントを始めさせていただきます」

坂井さんが類を広げ、を切った。 彩は静かに背筋を伸ばし、膝ののメモ帳を見つめている。

「今回の訓練は、駅の公営バリアフリー宅を活用したステップハウスとなります。は度訪問介護および居宅介護のヘルパーを計利用し、調理、清掃、入浴の部のサポートを受けます。夜は緊急通報システムと、民警備会社の駆けつけサービスを連携させる形になります」

坂井さんの説がむにつれ、私の胸の奥で、たいが渦を巻いて膨れがっていった。

、たった? 残りのは、きりだというの?

「あの、すみません」

私はたまらず、坂井さんの言葉を遮った。 テーブルのの全員の線が、私に集まる。

「坂井さん、専として本当にお聞きしたいのですが……本気で言っているのですか?」

「宮本さん?」

「彩は、肢完全麻痺なんですよ。覚もありません。お呂で万がお湯の温度設定を違えたら、傷しても気づかないんです。

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それに、夜に震が起きたらどうするんですか? スライディングボードを使ってベッドから子に移乗するだけでも、調子が悪いは分以かかる子なんです。逃げ遅れて圧するのが目に見えています」

私は気に捲してた。 言葉を吐きすたびに、正義と使命が胸を満たしていく。 私は母親だ。この子の体を、この子の限界を、世界で番っているのは私なのだ。

「自なんて、聞こえはいいですけれど、ただの無謀です。の丈にっていません。彩、あなたもいい加減目を覚ましなさい。お父さんの介助が嫌だったからって、極端な逃げを作るのはやめなさい。お母さんと緒に暮らしなさい。私が当たりのいい部を探して、今まで通り全部やってあげるから……」

「宮本さん、し落ち着いてください」

支援センターの女性職員が割って入ろうとしたが、私は止まらなかった。

「全部やってあげるって言ってるの! あなたのためをって言ってるのよ! なんで分からないの? 私がいなきゃ、あなたじゃ何もできないのよ!」

叫び終えたリビングに、苦しい沈黙が落ちた。

奥の部の義母の喚き声すら、ピタリと止んでいた。 坂井さんは痛ましそうに目を伏せ、夫はどこか事のように貧乏ゆすりをしている。 隣に座る林芽さんは、唇をく噛み締め、りを堪えるように拳を握りしめていた。

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