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"26年尽くした家を出る私を、車椅子の娘は無表情で見送った" 第2話

「彩……」

わず声が漏れた。 昨夜、私の部に来て「お父さんたちの勝にはもう耐えられない」と、私の胸で声を押し殺して泣いていた娘。 私がをたら、この子をどうやって守ればいいのか。 それだけが、私のを引き裂く唯の鎖だった。

だが、子を止めた彩の表は、驚くほどえ切っていた。 膝のに置かれた両は、微だにしなかった。

「お母さん、っていいよ」

く、い声だった。

「……え?」

「く荷物持って、てって」

彩は私から線を逸らさず、まるでに言い渡すかのように告げた。

「でも、から迎えに来たりしないでね。私、お父さんと暮らすことにしたから」

のが、真っになった。 の奥で、キーンという鋭い属音が鳴り響く。

嘘でしょう? 昨夜の涙は、何だったの? 子への移乗も、入浴の補助も、すれば段差のつすら越えられない娘を、誰がここまで支えてきたとっているの? 夫は度だって、娘のオムツを替えたことも、病院への送迎をしたこともないのに。

義母が、待ってましたとばかりに品な笑い声をげた。

「ほら見なさい! 娘にまで見放されたのよ、あんたは! 彩ちゃん、賢い子ねえ。あんな酷な母親についてったって、苦労するだけだものねえ」

夫も、目に見えて堵したように肩をらせ、腕を組んだ。

「だそうだ。

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彩はおより、俺を選んだんだよ。母親失格だな、真理子」

彩は何も言わなかった。 ただ、たい瞳で私の元……スーツケースの取っを握りしめる私のを見つめていた。

震える指先に、爪がい込む。 痛みが、かろうじて私の識を現実に繋ぎ止めていた。

「……そう」

声が、掠れた。

「わかったわ」

私はそれ以、言も発しなかった。 振り返ることもせず、い玄関ドアを押しけた。

背で、カチャリと内鍵がかけられる乾いた音が響いた。 もう度と、この敷居を跨がせる気はないという、確な拒絶の音。

のたいが、容赦なく私の頬を叩いた。 見げた空は、腹がつほど澄み渡っていた。

駅から徒歩分、築の造アパート。 畳のワンルームが、今から私のだった。

賃は万千円。 はし傾いていて、窓を閉めていてもをるトラックの振がかすかに伝わってくる。

けれど、ここには誰もいない。 「真理子さん、お茶」「おい、俺の靴はどこだ」と理尽に私を呼びつける声は、どこにもない。

部の隅に置いたスーツケースをけることもできず、私はたい畳のに座り込んでいた。 膝を抱えると、体の芯から震えが止まらなくなった。

。 私のの半分以を、あので過ごした。 義母の嫌を笑顔で受け流し、夫の無関に蓋をし、何より彩のためにきてきた。

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彩が学で自由ないをしないように、しでも自できるようにと、リハビリに付き添い、福祉制度を調べ尽くし、作りの補助具を縫い続けた。

『私がいなきゃ、あの子はきていけない』

そうい込むことで、私はあの息の詰まる庭ので、辛うじて自分の価値を保っていたのだ。 それなのに。

『私、お父さんと暮らすことにしたから』

娘のあのたい線が、刃物のように胸の奥くに突き刺さったまま抜けない。 裏切られた、というドス黒いが、じわじわと喉元まで競りがってくる。 なぜ? どうして、よりによって、度も真面目に面倒を見ようとしなかったあの男を選んだの?

その、バッグのでスマホが震えた。

画面を見ると、夫からのメッセージが件、件と続けて表示された。 計は夜のを回っている。

『おい、彩の入浴用の介助ベルト、どこにやったんだ? 見当たらないぞ』 『の朝のデイサービスの連絡帳、どこにある? お、勝にてって引き継ぎもしないで、親としての責任をどう考えてるんだ』 『今すぐ話にろ。お袋が腰が痛いと騒ぎして、シップの所もわからない』

画面に並ぶ文字を見つめながら、私は乾いた笑いを漏らした。

親の責任? もの、庭のあらゆるを私に啜らせておいて、たった半でこれなのか。

私は通話ボタンを押す代わりに、メッセージの通をオフにした。

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