"6年介護した義父から「息子を信じるな」と電話が来た" 第5話
「内の恥を作ったのは誰? お義父さんを裏切り、私を騙し、会社を潰しかけているのは全部あなたでしょう!」
私の声のさに気圧されたのか、浩司は宙に浮いたを震わせ、歩ずさった。
「なお子……お、俺が破産してもいいのか? に迷うんだぞ」
「破産するなら、堂々と自分で続きしなさい。お義父さんの命綱を奪って穴埋めするような真似は、絶対に許さない」
浩司は肩をさせ、悔しげに顔を歪めた。
「……勝にしろ。だがな、会社が潰れたら、俺はおにも活費は円も渡せないからな!」
吐き捨てるようにそう叫ぶと、浩司はドカドカと乱暴な音をてて玄関へ向かい、ドアを叩きつけるように閉めてでりっていった。
ざかるエンジン音を聞きながら、私は崩れ落ちるように畳のに座り込んだ。
膝がガクガクと震えていた。気な言葉を並べてたものの、臓は鐘のように打っている。
きりになった静かな。
に散乱した仏具や古い賀状の束を見つめていると、に界が滲んだ。
悔しさと、りと――そして、底れない疲労だった。
私は仏壇のにい寄り、散らばったものをつひとつ拾い集めた。番の引きしを完全に引き抜き、奥の羽目板を指先で探る。義父が言っていた通り、い板の奥にさな空があり、錆びたブリキ缶が収められていた。
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缶をけると、あせた布に包まれた義父の実印と、古い権利証が入っていた。
これだ。
これを浩司に見つけられていたら、無理やり義父の指を押し付けられていたかもしれない。私は缶を抱きしめ、仏壇の遺に目を向けた。にくなった義母の、穏やかな笑顔の写真。
『なお子さん、無理しちゃ駄目よ』
、義母がよく私のをさすりながらかけてくれた言葉が、の奥に甦る。
私は権利証と印鑑を自分のバッグの底にくしまい込み、リビングの机のに置かれていた名刺の束を探した。浩司が雑に散らかした類のに、見慣れない産会社のチラシと名刺が挟まっていた。
「エステート 担当・井」
裏面には、きで「佐藤様邸 概算査定額千百万円」とりきされていた。
私は迷わず、名刺の携帯番号に話をかけた。
回のコールの、落ち着いた男の声がた。
「はい、エステートの井です」
「突然の連絡で失礼いたします。佐藤忠雄の男の妻、佐藤なお子と申します」
相の声のトーンが、わずかに警戒を帯びたものに変わった。
「あ、浩司様のご族ですね。査定の件でしょうか」
「はい。単刀直入にお伝えします。名義である佐藤忠雄は、このを売却するは切ありません。現、夫の浩司が独断で話をめているようですが、本のも委任状もしません。
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もし今、本の確認を経ずに続きをめられるようであれば、弁護士および消費活センター、ならびに政の齢者権利擁護窓に相談させていただきます」
話の向こうで、井という担当者がさく息を呑む音が聞こえた。
「……奥様、ご主からは『父は施設に入所が決まり、売却続きはすべて男に任されている』と伺っていたのですが」
「それは虚偽です。義父は現、なショートステイを利用しているだけで、判断能力もしっかりしています。度でもご本に対面されましたか?」
「いえ……ご主から『体調が優れないので面会は契約当に』と言われておりまして……そうですか。承いたしました。所者ご本のが確認できない以、私どもとしてもこれ以の仲介業務をめることはできません。社内でも共し、浩司様からの案件は度に戻させていただきます」
「ありがとうございます。よろしくお願いいたします」
通話を切り、私はスマートフォンを胸元に引き寄せた。
売却のルートは、これで塞いだ。
だが――胸のつかえは、しも軽くならなかった。
台所へき、やかんをにかけて湯を沸かした。湯呑みに注いだ湯を啜りながら、きりのダイニングテーブルを見つめる。
夫の会社の破綻は、もはやの問題だろう。
浩司が個保証をしているなら、このは売れなくても、夫婦としての共財産や夫個の座は差し押さえの対象になる。