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"6年介護した義父から「息子を信じるな」と電話が来た" 第3話

義父の瞳が見かれた。張っていた頬の筋肉がわななき、やがて拳を固く握りしめた。

「あの馬鹿息子が……! そこまでして、親のを奪う気か!」

「お義父さんの実印と権利証は、どこにありますか?」

「仏壇の引きしの奥、底の缶のだ。あいつには所を教えていない。だが、を引っ掻き回されたら見つかるかもしれん」

「わかりました。私が今からに戻って確保します」

その、相談の引き戸がき、息を切らせた川さんが駆け込んできた。

「忠雄さん、奥様! ご無事でよかった」

川さんは状況を素く把握すると、施設と直ちに協議に入ってくれた。本の能力に問題がない以、契約者である夫が何を求しようと、本の拒否があればの転院など絶対に受け入れられないと施設側も言した。ショートステイの期を延し、全を確保する続きもそのでめられた。

「奥様、忠雄さんのの全はここで守れます。ただ、ご自宅の方は……」

「ええ、戻ります。夫と、ちゃんと話をつけてきます」

施設をる際、義父は呼び止めるように私の袖を引いた。

「嫁さん」

「はい」

「すまなかった。あいつの嘘を、瞬でも信じてしまった」

「いいえ。私も、夫の言葉を信じてしまいそうになりましたから」

義父はさく首を横に振った。

「だがな……あいつの言う通り、おが限界なのも本当だろう。

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だぞ。おのも、腰も、もう鳴をあげているはずだ」

義父の線は、湿布の匂いが染みついた私の指先に向けられていた。

胸を突かれた。

否定したかったが、言葉がなかった。夫が吐いた嘘は卑劣極まりないが、私がともに限界を迎えていたことだけは、残酷なほど事実だったからだ。

「わしはもう、おに元の通りの世話を押し付ける気はない。を守るためにおを縛りつける気もない。だから……お自のことも、守りなさい」

「……はい」

私はくをげ、あけぼの苑をにした。

をらせながら、胸のでたい炎が燃え広がっていくのをじていた。

夫の浩司は歳。先代である義父からさな空調器の修理業を継いだが、景気の悪化と引な経営が災いして、ここ数は資繰りに窮していた。だが、いくら困窮しているからといって、父親を騙して施設に放り込み、介護した妻を精神に追い詰め、親の終の処を奪おうとするなど、到底許されることではない。

宅に入り、見慣れた階建ての本が見えてきた。

玄関のには、夫の営業用ライトバンがまっていた。

私は静かにを止め、エンジンを切った。鍵をけて玄関に入ると、廊の奥からガサゴソと何かが擦れう異様な物音が響いていた。

靴を脱ぎ、音を忍ばせて階の奥、義父の部へと向かう。

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襖が半分いていた。

部のはの踏みもないほど荒れ果てていた。押し入れの袋から引きずりされた段ボール箱、畳のに散乱した古い類やアルバム。そして仏壇ので、夫の浩司が背を丸め、引きしを力任せに引き抜いてをぶちまけていた。

「どこだ……どこに隠しやがった、あのクソジジイ……」

焦燥にまみれた夫の呟きが、静かな部に落ちる。

私は襖を静かに、けれどしっかりと音をてて引き切った。

「何を探しているの?」

夫の肩がねがった。

振り返った浩司の顔は、寝と苛ちで赤黒く充血していた。には義父の古い帳が握られている。私の姿を認めた瞬、夫の目に浮かんだのは驚愕ではなく、居直りのだった。

「お……なんでここにいる。親父の面会にはくなと言ったはずだろ」

「あけぼの苑へってきたわよ」

私の静かな声に、夫のきが完全に止まった。

「お義父さんから、全部聞いた。あなたが私についた嘘も、お義父さんについた嘘も、全部」

夫の眉が歪み、握りしめた帳がくしゃりと音をてた。

「……お、施設で何を吹き込まれてきた」

浩司は帳を放りし、荒くなった息を吐きながら私を睨みつけた。

「吹き込まれた? 逆でしょう。あなたが嘘をついたのよ。お義父さんは私の顔も見たくないなんて言も言っていなかった。

私にも『お義父さんがもう世話になるのを嫌がっている』って……どうしてあんな残酷な嘘がつけるの?」

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