"15年育てた妹の結婚式で、父に親族席から外された" 第7話
「正彦」
修平伯父さんのくい声が、父の喚き声を遮った。
「お、まだそんな嘘を並べているのか」
父の言葉が喉で詰まった。
「な、何を……」
「ちゃんが、のに俺のところへ来たよ。でな」
修平伯父さんはコートのポケットに両を突っ込んだまま、父を射すくめるように見つめた。
「おが再婚相と暮らすためにちゃんを静岡へやろうとしたのこと、真紀ちゃんが泣きながら俺に話をかけてきて、で暮らすためのを作ったのこと……全部、ちゃんに話した。あのの取り交わしの類も、俺は全部保管してある。おが真紀ちゃんにサインさせた、『今の監護についての覚』もな」
父の顔から、みるみる血の気が引いていった。 唇がわなわなと震え、線が宙を泳ぐ。
「あ、あれは……あのは、な措置として……」
「だと? あれから、おは度でもちゃんの運会を見にったか? 授業参観に顔をしたか? 真紀ちゃんが仕事を辞めずにちゃんを学へすために、どれだけ駆けずり回っていたか、度でも自分の目で確かめたことがあるのか」
修平伯父さんの言葉は、淡々としていた。鳴るわけでもなく、ただ徹に事実を積みねていく。
「おは何も見ようとしなかった。自分から投げしたんだ。
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それを今になって、結婚式の席がどうの、父親の権威がどうのと……見苦しいにも程があるぞ」
「兄さん、俺は父親だぞ! あいつらにを送ったことだってある!」
「そのの何倍の苦労を、真紀ちゃんが背負ったとっているんだ」
伯父さんはく息を吐き、首を横に振った。
「ちゃんが今、おを呼んだのはな、恥をかかせるためじゃない。父親として、最にやり直す会をおにくれたんだよ。それをおは、自分のつまらん見栄のために蹴りばした。番でおめでとうと言ってやることすらできん男が、何の父親だ」
父は言葉を失い、ち尽くした。 その背は、先ほど控で鳴り散らしていたのような威圧を完全に失い、ただのさく老いた男の輪郭を描きしていた。
私は物から、その景を静かに見つめていた。 胸の奥に、かつてあれほど渦巻いていたりや悔しさは、議なほど湧いてこなかった。 あるのは、ただい虚しさだけだった。
父は変わらない。も、今も、そしてこれからも。 自分の非を認めることも、の痛みに寄り添うことも、このにはできないのだ。 その残酷な事実を、私は今、完全に受け入れることができた。
「真紀ちゃん」
修平伯父さんが私の気配に気づき、静かに声をかけてきた。 父が弾かれたように振り返り、私と目がった。
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その瞳には、羞恥とりと、そして隠しきれない怯えが混ざりっていた。だが、父は私に向かって言も発することができず、ただ忌々しそうに目を逸らし、逃げるようにロビーの入へと歩きっていった。
引き止めようとするは、私のどこからもかなかった。
「……伯父さん、ありがとうございます」
私が歩み寄ってをげると、修平伯父さんは困ったように目尻をげた。
「礼を言われる筋いはないよ。俺も昔は、おたちを静岡に引き取ってやることもできずに、見て見ぬ振りをしただ。すまなかったな、真紀ちゃん。全部、おに背負わせて」
「いいえ。を育てたは、私のでもありましたから」
私がそう答えると、伯父さんは力く頷いてくれた。
「さあ、きなさい。式が始まるぞ。婦の隣には、おが座るべきだ」
チャペルのい両きの扉がいた。
厳粛なパイプオルガンの音が、い井へと吸い込まれていく。 微かに焚かれたインセンスのりと、無数のの甘い匂いがをかすめた。
参列者たちが着席したチャペルのは、張り詰めた静寂に満ちていた。 分の遅延という異例の事態に、列席者たちのにはまだ微かなざわめきが残っていた。特に郎側の親族席からは、何事かといぶかしむような線がこちらに向けられているのが肌でじられた。
だが、私は度も線を伏せることなく、バージンロードの側、婦の族席の最列へとんだ。