"15年育てた妹の結婚式で、父に親族席から外された" 第1話
チャペルの扉の向こうから漏れ聞こえていた微かなざわめきが、係員の駆け込んできた音で瞬にして掻き消えた。
「婦様が入を拒んでいらっしゃいます」
息を切らした若い女性スタッフの声に、最列の丸テーブルに座っていた数名の会葬客が斉に顔を見わせた。私の席は、会の最も隅、入に番い所だった。目のには、に箔で『藤井真紀様』とだけ印刷された卓札がぽつんと置かれている。
に母をくし、私は歳で当歳だった妹のを引き取った。 自分の青も、転職の会も、すべてを回しにして妹を学まで通わせ、今というを迎えた。それなのに、今朝式に着いて渡された最終の席次表で、私の名は婦の親族席から完全にされていた。
『勝に妹を連れてをたおに、族の席なんかない』
受付の脇で、父の正彦は吐き捨てるようにそう言った。 歳になった父の顔には、かつて私を罵倒したと同じ、の痛みを切受け付けない頑ななが宿っていた。親族席の私の本来の子には、何も顔をわせていなかった伯父が座っている。波をてて妹のれ台を台無しにしたくない。そう自分に言い聞かせ、私は黙って指示された番ろの席に腰をろしていたのだ。
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だが、その沈黙を切り裂くように、膝のでハンドバッグののスマートフォンが震えた。
画面にったのは『』の文字だった。 胸騒ぎを覚えながら通話ボタンを押し、に当てた瞬、受話からかすれた妹の泣き声がび込んできた。
『お姉ちゃん、迎えに来て……』
周囲を気にしながら、私は咄嗟にをかがめた。
「? どうしたの。今、スタッフの方が」 『お父さんがね……お姉ちゃんを族席に座らせるなら、もう娘じゃないって』
震えるの声の背で、激しい論の余韻のような、張り詰めた気配が伝わってきた。
「私、嫌だよ。お姉ちゃんがろに座らされるなんて、絶対に嫌。そんな式、たくない」 「、待って。今どこにいるの」 『ブライズルーム……お願い、来て』
通話が途切れた。 私は子の背にかけていたショールを掴み、ちがった。隣のテーブルに座っていた招待客の線が背に刺さったが、振り返る余裕はなかった。式の絨毯を踏みしめ、い扉を押しけて廊へる。案内板を頼りに、婦の控へと続く通を急いだ。
胸の奥が、たいで満たされていくようだった。 なぜが入を拒んでいるのか。なぜ式の直にそんな話になったのか。その理由は、廊の先につブライズルームのに辿り着いた瞬、あまりにも残酷な形でわになった。
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部の扉のには、青ざめた顔の式責任者の男性と、の担当プランナーがち尽くしていた。 私が歩み寄ると、私の胸元のコサージュと名札を瞥したプランナーが、すがるような目をしてをげた。
「藤井様のお姉様でしょうか……」 「妹はどうしていますか。何があったんですか」
私の問いに、責任者の男性は額の汗を拭いながら、声を潜めて答えた。
「変申し訳ございません。実は……昨の夕方、婦のお父様から直接お話をいただきまして、婦側の席次に緊急の変更があると承ったのです。お父様は『郎婦からも承を得ている、急遽方から席できることになった親族を列に入れ、女の席を方に回してほしい』と仰られまして……。私どもの確認で、婦様ご本への再確認を怠ったまま、今朝の最終印刷に反映させてしまいました」
臓の鼓が、の奥で嫌な音をてた。 父は、私の席を奪うために、わざわざ式の裏側にを回していたのだ。
「は、それをいつったんですか」 「挙式の分ほどです。お支度が仕がり、最終確認のために席次表をお見せしたところ、婦様が激しく揺されまして……。すぐにお父様へお話をかけられたのですが、スピーカー越しにお父様が『席を元に戻すなら父親としての席を取りやめる。
披宴の援助もすべて引き揚げるし、今切の縁を切る』と仰り、そのまま話を切られてしまったのです」